九 ページ10
「…三人目は」
「三人目の罪人は、君と同じ世界から来た女だ。死神の意図に逆らって死を逃れようとし、禁句を犯した」
ふわ、と泉に光が集まる。
「名前は秋野 スミレ。齢13の箱入りお嬢様だ」
金髪に染めた髪の毛を緩くまいて、濃い化粧をした女の子。
「秋野は妖術を持っていなかった。生き延びようと忍者たちに媚を売ったが、それは裏目に出た」
「四肢を切断されたって聞いた」
「ああ。前の天女たちと重なって見えたんだろう」
僕も、殺されるんだろうか。
「安心していい、A。なにかあったら私が君を守ろう」
優しく頭をなでられて、目を覗き込まれる。
「私は君を気に入ってしまったからね」
「…僕もカイのこと好きだよ」
「嬉しいことを言ってくれるね」
なんだか、お兄ちゃんができたみたいだ。
「本当に申し訳ない、A。こんなことやりたくないだろう?」
「良いよ、別に。玲夜に会わせてくれるんでしょ?」
「…」
カイが困ったように笑みを浮かべる。
「実はね、彼はもうこの世界にいるんだよ」
時間が止まった気がした。
ゆっくりと、時間をかけてその言葉の意味を理解する。
玲夜が、この世界に、いる…。
「本当?!カイ、玲夜はこの世界のどこにいるの!ご飯はちゃんと食べてる?寝るところとか、住むところとかは?」
「ふふ、大丈夫だよA。彼は今、兵庫水軍の一員として過ごしている」
兵庫水軍…。
「学園長殿が言ってた…海賊の方々!」
「そうさ。皆、彼のことを仲間として認めているから大丈夫だ」
良かった…!
「もし何か異変があったらすぐ伝えるよ。…ああでも、目が覚めた時、兵庫水軍に会いたいなんて言わないようにね」
「僕そんな馬鹿なことしないよ」
そんなことしたら余計に怪しまれる。
「ふふ、そうだね」
本当に良かった。
玲夜、僕のこと心配してるかな…?
「ねえ、カイが玲夜に会いに行くことはできないの?」
「できるさ」
「じゃあ玲夜に僕のこと伝えといて」
「ああ。そろそろAも戻る時間だよ」
僕の手をひいて立ち上がらせると、カイは僕の後ろを指さした。
いつの間にか、そこには鏡があった。
夜空のみを映しているそれは、どこか神秘的だった。
「もし何かあったら、君のいる学園の裏裏山にある神社までおいで。私はいつでもそこにいるから」
鏡に触れようとすると、手はガラスを通り抜けていった。
思い切って、鏡の中に踏み込んだ。
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空 - 面白いです。お互い更新頑張りましょう (9月9日 13時) (レス) id: ffd33a398f (このIDを非表示/違反報告)
夜桜ほたる(プロフ) - すごく面白いです!!!更新楽しみにしてます〜!! (8月17日 9時) (レス) id: 1600cbbb8f (このIDを非表示/違反報告)
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