八 ページ9
今まで柔らかかった表情が真面目になって、僕の顔を見つめている。
「それって…学園長殿が言ってた、天女…?」
「そうさ。あんなやつらが天女と名乗っているだなんて、反吐が出るよ」
カイは僕の肩に手をおいてしゃがませると、隣に座った。
「これが一人目」
澄んだ池に一人の女の子の顔が浮かび上がる。
艷やかな桃色の髪を左右で束ね、赤いリボンで結んでいる。
瞳も桃色。
一般的に言えば、「可愛い」と表現する顔立ち。
…僕は玲夜以外に興味がないからあまり分からないんだけど。
「元の世界での彼女は、「軍隊のハニートラップ用員」。潜入先の敵国で元からいた幹部を陥れ、うぬぼれた挙げ句敵国に身元がバレて拷問死されるという結末だったはずなんだ」
まるで人の人生を物語みたいに語る。
「名前は、マリア。マリア・キューピッド。彼女は、悪魔と契約を結んでこの世界に来た。契約者の悪魔は、彼女の武器であるハニートラップを強化した術を彼女に授けた」
「!それが、この世界での妖術…?」
「ああ。本来ならば存在しなかったキューピッドの存在によって、「平和で明るい忍術学園」という世界は壊された。おまけに悪魔と契約してるとなっちゃあ、重大な罪人だ」
ああ、と彼は付け加えた。
「キューピッドが陥れた幹部がいたと言っただろう?実はその子もまた別の悪魔に守られていてね。いや、悪魔ではなく天使だったのかもしれないね。だが、最後は二人で心中してしまった。可哀想な結末だった」
こちらに目線を投げかけてくる。
居心地が悪くなった。
「…カイ、二人目について教えて」
「…そうだね。これが二人目だ」
ふわ、と池に黒髪の女の人の残像が現れる。
長い黒髪に切れ長の黒い瞳。
気が強そうだ。
「彼女の名前は篠崎 綾香。元の世界では神々に暴行を働いて斬り殺された悪人だよ」
「神々…?」
「そうさ。刀に宿る付喪神たちに暴力をふるい、暴言を吐き、目の前で仲間を折った。酷い人間だよ」
目を細めて息を吐く。
「彼女に宿る霊力は、強力だった。…霊力は、使い方を間違えば己をも滅ぼす恐ろしい力。神々に仕え、正しく使用するために人間に授けられた力なのに。…彼女は、霊力を使って忍術学園の者たちを洗脳した。本来ならば出来ないはずなのに、そんなこと」
なぜだろう。
なぜ彼女たちはそこまでして人が傷つく姿を見たかったんだろう?
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空 - 面白いです。お互い更新頑張りましょう (9月9日 13時) (レス) id: ffd33a398f (このIDを非表示/違反報告)
夜桜ほたる(プロフ) - すごく面白いです!!!更新楽しみにしてます〜!! (8月17日 9時) (レス) id: 1600cbbb8f (このIDを非表示/違反報告)
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