七 ページ8
ぽちゃん、と水の音がする。
どこまでも果てしなく夜空と、目の前の広い池。
睡蓮の上に水がはねて、桃色の花が揺れた。
「れいや、?」
風が髪を揺らす。
池の上に、誰かが立っている。
真っ白な長髪を揺らして、こちらを向いて。
目を凝らしても、顔は見えなかった。
「君は、とても可哀想だね」
耳を疑った。
「本当に哀れだ。惨めだ。唯一の恋人からも切り離されてしまうだなんて」
「、お前…誰…?」
「君は神々に救われなかったのさ」
僕の質問を無視して、その人は続けた。
「異常だったからではない。歪んでいたからではない。ただ、運が悪かっただけさ」
ひょうひょうとした話し方が、癪に触る。
「そして君はまたも運が悪く、禁句を犯した者たちの尻拭いまで押し付けられてしまった」
禁句を犯した者…?
「だから、私が君を助けに来たんだ。神々のせめてもの罪滅ぼしとしてね」
ぱっ、と手を広げて、すべるようにこちらに近寄って来た。
「私はカイ…創造を司る神さ」
カイ、と名乗ったその男は、僕の頬にそっと触れた。
「君がこの世界を元に戻す役割を手伝うと共に、君の恋人を連れ戻してあげよう。私は君が気に入ってしまったからね」
「!…玲夜と会わせてくれるの?!」
「もちろん。そしてこの世界を元に戻したら、君たち二人しかいない世界を造ってあげようか」
彼の顔がやっと見えるようになった。
こちらを優しく見つめる瞳は金色。
魔法のような言葉だった。
「君たちはもう十分苦しんだじゃないか、もう一つ世界を造るくらい容易いさ」
「…うん」
「ああでも、もし元の世界に帰りたくなったらいつでも帰してあげる」
その金色を真っ直ぐ見つめた。
「本当に?」
「本当さ、神は嘘をつかない。…まあ、つく奴もいるんだけどさ。私はつかないよ」
玲夜とまた会えるなんて、夢みたいだ。
「この世界はまだ壊れている。世界を一つ壊したまま別の世界を造ることはできないんだ」
「…壊れるって、具体的にどういうこと?」
「本来ならば存在しなかったはずの者によって物語がおかしくなってしまうことだ。この世界は、神々の中では「忍ぶ者のたまご」、略して「忍たま」と呼ばれている」
忍たま…。
カイは口を開いた。
「禁句…。それは、神々の許しをなしに自分がいる世界から他の世界に行くことだ」
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空 - 面白いです。お互い更新頑張りましょう (9月9日 13時) (レス) id: ffd33a398f (このIDを非表示/違反報告)
夜桜ほたる(プロフ) - すごく面白いです!!!更新楽しみにしてます〜!! (8月17日 9時) (レス) id: 1600cbbb8f (このIDを非表示/違反報告)
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