六 ページ7
「待てよ!待てったら!」
「…なに」
「…おれに同情しねぇのかよ」
同情?この子のどこに同情する要素があるんだ?
「…まず僕は君のことを知らない。君のどこに同情すればいいの」
「っ知ってんだろうが!前の天女たちは皆知ってた!おれに向かって、可哀想だね、とか、私が貴方の親の代わりになってあげる、とか言われて、信用したら利用された…!お前もどうせ一緒のことするんだろう!っおれは、お前ら天女なんかだいっきらいだ!」
親の代わり…?
「あ、君もしかして親いないの」
「そうだよ!同情するか!?」
「しない」
その子はきょとん、と目を見開いた。
親がいないってだけで同情されてる彼が憎らしかった。
「…あのね。僕、恋人がいるんだ。その人も僕も男だったから、周りは誰も認めてくれなかった。だから僕は彼と心中したんだよ。…なのにここに連れてこられて、天女呼ばわりされてる。僕は彼と一緒にいたかっただけなんだよ?…僕は彼だったから好きになったんだ。もう僕十分苦しんだよ。なのになんでまたこんな目に合わなきゃいけないの。僕が同情してほしいくらいだよ。親なんていない方が良いんだよ…縛られて苦しいだけだよ。君は良かったね、親が死んだ時泣けて。僕だったらっ、きっと大喜びしてると思う。…結局、」
結局僕を愛してくれるのは玲夜だけだ。
自分でも何を言ってるのか分からなくて、最後は涙声でまくし立てていた。
しんべえくんも目の前の男の子も、目を見開いて困惑している。
「Aさん、泣かないでぇ」
しんべえくんがクッキーを持ったまま足元に近づいてきた。
無性に人の温もりが欲しくなって、しゃがみこんでしんべえくんを抱き締めた。
彼の肩に顔を埋め、泣きじゃくる。
口からは嗚咽が勝手に漏れて、玲夜に会いたいという気持ちが高まって。
「…」
もう一人の男の子が背中をゆっくり撫でてくれた。
玲夜もよくやってくれた。
僕が泣いてると、ぎゅって抱き締めて背中を撫でてくれた。
そうすれば落ち着いて、眠くなってきて、玲夜の腕の中で寝ちゃうんだ。
でも今は涙は止まんないし頭は重いし、胸のあたりは痛い。
意識が無くなりそうになる。
起きたら玲夜が隣にいたらいいな。
それで、二人でどこか遠くに行きたい。
僕ら二人だけで。
瞼が重い。
逆らうことなく目を閉じた。
なんだか、すごく眠い。
しんべえくんが、なにか言ってるような気がする。
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空 - 面白いです。お互い更新頑張りましょう (9月9日 13時) (レス) id: ffd33a398f (このIDを非表示/違反報告)
夜桜ほたる(プロフ) - すごく面白いです!!!更新楽しみにしてます〜!! (8月17日 9時) (レス) id: 1600cbbb8f (このIDを非表示/違反報告)
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