前編 虚無感 ページ34
傍にいたくて、
見て欲しくて、
そんな独占欲、抱いてはいけないですか?
「ねえ柳くん。」
「なんだ駿河、また変態な話か?」
「違うよ、もう、私をなんだと思ってるの。」
柳くんの私への認識は
テニス部のマネージャーか、変態女子。
なんだろうね。
いつも私と会話をするときは、
半歩下がって、距離を保っている。
私は顔には絶対に出さないし、態度にもださない。
自慢ではないが、ペテン師である仁王くんにも
この間お褒めの言葉を頂きました。
「お前さんと俺、
似たもん同士、じゃな。」
つまり、同じく人を騙せてるってことでしょう?
本業の人に言われると、案外嬉しいもの。
「…駿河?」
「あ、ごめんね。
もう一度、言ってもらっても良いかな?」
柳はため息をつくと
「大丈夫か?」と問いかけた。
駿河は「大丈夫。」と明るい声で言った。
私は柳くんの話を聞きながら
チラリと、手帳で隠れている柳くんを見た。
ねえ、柳くん、
貴方の得意なデータで測ってよ、
「…なんだ駿河。」
「手帳の中身、見せてくれない?」
「前にも言っただろう?
人に見せるために、書いているんじゃない。」
柳は手帳を胸ポケットにしまうと
「じゃあな。」と言って
先に教室へと入ってしまった。
「……そんな全力で、拒否しないでよ。」
好きな人に拒否をされるほど、
作り笑顔が崩れることなんて、ないんだから。
「柳、最近お前、駿河と居ないな。」
「それはどういうことだ?」
部活終わり、
恐らく精市に待たされていたであろう人物が
欠伸をしながら、俺に話しかけてきた。
「まんまだよ、まんま。
だってお前らさ、下校も一緒だったじゃん。」
「駿河が付いてくるからな。」
「付いてくるって…赤也じゃねえんだから…」
彼女は呆れて溜息をついた。
俺は、「失礼する」と言って横を通り過ぎようとした。
「_____駿河さ、
なんか最近、変じゃなかった?」
その言葉に、
ピタリと俺の足は止まり、彼女を振り返る。
「何か知っているのか?」
彼女は首を横に振り、
俺を指さす。
「…お前は知らないの?」
「悪いが知らないな。」
「私さ、柳くらいしか、
駿河が一緒にいる人、見たことないんだよ。」
駿河は同学年に仲の良い友人がいない。
だから、いつも俺の所に、隣にいた。
「データーだけじゃ、
あいつは計り知れないよな。」
彼女は口角を上げて、笑った。
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作者ホームページ:なし 作成日時:2015年10月19日 17時