第78話 帰らざるもの ページ32
「____あれ、お前
テニスコートに行かないんだ。」
「あ、うん。」
「てかさ、冬休み中行ってんの?」
補習を終えて、帰ろうとする雪音の後ろに
皐はひょこひょこと付いていく。
「あ、たこ焼きだ。
買ってこーぜ。」
雪音に釣られて
移動販売のたこ焼き屋に寄った。
「…あのさ、お前らってケンカしてんの?」
「え?う、うーん…ケンカというか
私が一方的に言った感じ?」
「へえ、珍しいこともあるもんだな。
あの大魔王が、お前に何も言い返せなくなるんて。」
雪音はフッ、と鼻で笑うと
遠くにす地味そうな夕焼を眺めながら
ポツリ、ポツリと話しだした。
「たっだいまー!!」
ハイテンションで家の扉を開けると、
部屋の奥から葉月が走ってきて、2階に連行。
「え?どうした?」
「シー!静かに!!
皐メール見てないの?!」
「え?」
ポケットに入っている携帯を見ると
何通も葉月からメールが届いていた。
「あ、まじだ。」
「…時間がないからよく聞いて!
またお父様が帰ってくるから、
精市の家に泊めてもらって!
もうお願いはしてあるから!!」
「え、今日メリクリっすよ?!」
「嘘でしょ?」という顔をすると
葉月は皐の両頬引張った。
「仕方がないでしょう?
お父様、皐のこと嫌いなんだから!
メリークリスマス!良いお年を!」
「は、ちよ、ちょっと!!」
皐の手に、少し大きめの鞄を渡すと
勢いよく扉が閉まり、締め出しを食らった。
「えー……」
荷物と扉を何度も見る。
扉が開く気配は、無さそうだ。
「はあ……仕方ないか。」
カツン、カツン、と
ローファー特有の音を出しながら
幸村の家までの帰路を歩く。
ていうかさ、
幸村の奴、葉月にケンカしてます!
とか言わなかったのかよ…
自分からは気まずくて話に行けなかったため、
幸村があの時なにを感じたのか、
よく分からない。
あの表情は、意外。という顔だったのか、
それともショックを受けていたのか……
「あーあ、やっぱり読心術極めようかな。」
なんて、
思ってもいないことを口に出す。
「はあ」と息を吹くと
白い吐息が、うっすらと見えた。
「やっぱ寒いなあ……」
何処かで温まろうか。
と考えた。
「あ!
ここら辺に良い場所があったじゃん!」
静かで広くて、
寝る場所もあって温かい場所。
「そうだ、図書館に行けば良い話さ!」
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作者ホームページ:なし 作成日時:2015年10月19日 17時