問題児の高校生活２【幸村精市】 (ページ30)

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序章　芽生えの時ページ30

土に埋められた種は、

過ぎ行く時間の中で、
やがて大きな花を咲かせ
散ってしまう。

花の生涯は短く、
そして孤独だ。

立海のデータマン
そう呼ばれる人物の名は、柳蓮二
　

データマンの彼には、
相手の行動や言動、すべてが予測できる。
“すべて”が。

「おはよう柳くん!!」

明るい声色が教室に響き渡る。
毎度の光景に、クラスメイトは
自然と何も気にしなくなった。

「朝から随分と騒がしいな。
また、新たな変態話か？」

そう言うと、彼女はニコニコと笑いながら
「違う違う！」と言うと、柳に耳打ちする。

「さっきね、男子更衣室覗いてたんだけど」

朝からの第一声は、
基本的に、彼女が行っている変態行動。

柳はため息をついて席に座り、本を読み始めるのだが、
彼女はそんなこと気にする事無く話し続けるため、
仕方がなく、相槌だけ打つ。

「やっぱりね、運動部は体引き締まってるよね！
なんて言うんだろ…こう、かっこいいよね！」

「言いたいことはそれだけか？」

「え？まだまだあるよ～
あ、そうそう、今朝ね＿＿＿」

彼女は、よく話す。

妄想全開の変態話や、学校のスクープ等。
だから柳も、彼女に助けられているところはあった。

ただし、殆どがくだらない内容。

「＿＿＿＿＿駿河。」

「え？何柳くん。」

「…お前、俺に何か隠していることはないか？」

「え？ないよ？」

キョトンした表情で、即答された。
だが、駿河の行動には所々違和感を感じる

テニス部のマネージャ
同じクラス

この２つによって生まれた
柳と駿河の距離感は、他のクラスメイトと比べると
限りなく近く、親しいもの。

だから柳は、
駿河の違和感に、すぐに気づいてしまった。

「駿河、やはり何か隠しているな？」

「隠してないよ？
も～柳くんたら変な子ね、お母さん困っちゃうわ！」

「駿河」

駿河は、やはり何かを避けようとしていた。
いつものくだらないギャグを付けて。

「……別に何もないなら良い。」

「そんな意味ありげに言わないでよ！
私、本当に何も隠してないよ？」

柳は、席を立つ瞬間、
もう一度だけ、彼女の顔を見た。

やはり、何か隠しているな。
顔に全部出ている…

彼女は、長い睫毛を伏せ
何かを、考えている様子だった。

芽生えの時＿＿＿

小さな蕾は、
やがて、大きな亀裂を発す。