第59話 緑茶と豆乳 ページ12
「おーい斎藤、お前、ここ解け!」
「…」
「おーい斎藤?
斎藤、聞こえてるか斎藤!!」
教室の前から叫ぶ先生の声など
皐の耳には届いてはいない。
皐は、ぼーっと外を眺め
ペンを回したり、頬杖を付いたりと、繰り返していた。
『好いとうよ、お前さんのこと
8年前、初めてこのお祭りでお前さんに会った時から、
ずーっと…』
頭に響く、この言葉
あの時の彼の瞳は儚げだった。
綺麗な銀髪も、悲しげに花火に照らされていた。
8年も、前から…
私のこと、知ってたんだ。
知ってて、私に近づいた?
でも仁王、私のこと好きなんて素振り
一度も、一度も_________
『お前さんの家族、
俺が一緒に探しちょるよ。』
「_____あ」
「こら!斎藤!!」
次の瞬間、
頭の上に、丸めた教科書が落ちた。
「〜〜!!」
あまりの痛さに頭を抱えていると、
先生が「今日は、補修決定!」と言って、
授業を再開させた。
「はあ…」
「何回目のため息だ、このバカ」
ダムッ、という音と同時に
私の顔面にバスケットボールが直撃
「痛いよ雪音…」
「お前がしょげてるのなんか気持ち悪い。
あと、何回もため息つくな、ウザイから。」
友達に対して、
ここまで暴言を吐く女、見たことがあるだろうか?
いや……ない。
「お前、そんなしけたツラ見せるんだったら
歩いて購買前の自販機まで行ってこい。」
「え?やなんですけど?!
雪音の言うことなんて、聞くわけ無いじゃ〜ん。
そんなんだからいつまでたってもひ」
「吊るすぞ」
「スイマセン…」
雪音の威圧感は、
幸村と違った怖さがある。
恐るべし“ユキ”繋がり
もはや、同士ではないだろうか?
「そう考えると恐ろしや…」
ブンブンと首を横に振り、
自販機のもとへ足を速めた。
-
「で、私のお茶は?」
「この新作豆乳に目がくらんでっ…!!」
飲みかけの豆乳を渡すと「大豆製品嫌い。」と
手を払われた。
「そんなんだから雪音はまな板なんだ!!」
「うっさいバカ!でけえ声で言うもんじゃねえだろうが!!」
5時間目が始まる頃、
皐が顔に絆創膏をつけて
教室に入ってきた。
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作者ホームページ:なし 作成日時:2015年10月19日 17時