お世話２８日目 ページ29
「ねえ焔。
精市ってさ……あの人のこと好きなのかな。」
あの人とは、
コートのベンチに座っている
自分と同じく黒髪の少女
「それはわかりませんが。
特別な感情を抱いている様に
見えることは確かですね。」
少女は顔を歪める
下唇を噛み締め、小さく舌打ちをする
「…なんで、かな。
精市、私との約束忘れちゃったのかな…？」
「それはないと思います。
…失礼ですが、約束とは？」
焔が尋ねると
少女は俯けていた顔を上げて
「ずっと＿＿」
「うわーお前そんなの約束してたんだ？
相変わらず独占力が強いっていうか、
めんどくさい女だな。」
葉月は焔を睨みつける
しかし、焔は冷静な表情
「葉月様、
今のは私ではありません。
このバカです。」
「バカはないだろ？」
草陰から出てきたのは、
焔と全く同じ顔の青年
頭や体についた草を払いながら
葉月を見下すように見る
「昔から思ってたけどさあ…
お前、一生彼氏できないタイプ」
「それは颯も言えることでしょう？」
「俺はできないんじゃなくて、
つくらねーんだよ。
皐のためにも。」
ああいうバカって、
危なっかしくて放っておけないんだよ
身近にこんな女もいて
家には居場所なんかないて
そんな奴、放ってなんかおけない
「……そう。
でも私は、精市は渡さないから。」
鋭い目つきで俺を見上げる
こんな顔、絶対にあいつの前ではしない
「おー怖い顔。
用がないならさっさと立ち去れよ？
ただの“迷惑”になるから。」
馬鹿にするように高笑いをすると
「うるさい！」一括された
俺は笑いをこらえながら
テニスコートへに入り、
皐に話しかけた
「あれ颯…どうした？」
「伝言だよ。
あ、悪いけど、ちょっとこいつ借りるな。」
ちょうど跡部財閥の坊ちゃんがいたので
聞いてみると、「別にかまわない」
そう言われたので、少し距離を取る
「颯、要件って何？」
「ああ、実は…………何かな幸村くん？」
相変わらず清々しい顔で
皐の隣に立つ幸村
「大丈夫だって。
俺は怪しいもんじゃないよ？
皐に聞けばわかる。」
幸村は皐に視線を移す
皐は颯の顔をじっと見つめると
「女好きで、スナック菓子大好きな
チャラ男なボディーガード。」
蔑むような瞳で颯を見る幸村
「や、誤解だぞ？！
幸村くん、そんな目で俺を見るなっ…！！」
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作者ホームページ：なし 作成日時：2015年8月28日 20時
