お世話２７日目 ページ28
「そういえば皐、
お前の……あれ？」
「娘さんならあっちぜよ。」
「…あんなに急いで、
何処へ行く気だ？」
猛スピードで入口まで走り、
一礼すると再びダッシュ
「幸村！」
「なんだい？」
息を切らしながら
幸村の前まで歩く
そして、
「え…えっと君は…
何をしているんだい？」
「見てわかんだろうが！
私なりの励まし方だ！」
ドヤ顔で言ってのける皐だが、
実際の所、本当に何がしたいのかわからない
ただ分かることは
一生懸命手を広げてなにかしている
幸村は暫くその頑張りっぷりを見ていたが、
余りにも悲惨な姿だったため
ため息をついて皐の腕を引き
椅子へと座らせた
「で、何がしたかったの？」
「だから、私なりの励まし方だ！
この胸に飛び込んできて良いぞ…」
自分で言ってて屈辱的だったせいか、
言葉がフェイドアウトしてくる
そんな姿を見て、幸村は笑う
「笑うなんて失礼だろ。」
「ごめん、なんか面白くってさ。」
自分で言って自分で傷つくなんて、
本当にバカだよね
“もー最悪！
スカート汚れるじゃんか！！”
「ど、どうした幸村！！」
幸村がいきなり肩を掴んできたため
驚いたあまり声が裏返った
幸村はハっとなると、
手を離し「ごめん」謝った
「何かあったのか？」
「や、何でもないよ。
ちょっと思い出したことがあっただけだから。」
「ふーん。」
興味なさげな返事をした
頭の後ろで腕を組み、空を見上げる
雲が帯のように広がっていて
青い空はなかなか見えない
「あー、そっか…
今日は抽選日か。」
一発トーナメント戦の相手を
中学生、高校生代表として１名
つまり計２名
中学生代表は大石
高校生代表は平等院
なんとも反りが合わなそうな二人が
抽選会場へ行き、くじを引きに行った
「なーんか、嫌な予感がするな。」
「どうかしたのかい？」
「ただの独り言。
……さて、コートに戻るか。」
ラケットを持って
再びコートの中へ
彼女は戻っていった
「はあ……
なんであの人の言葉が頭を過ぎったんだろう。」
忘れもしない
あの女の子
出会い方があまりにも強烈で
一瞬の出来事だったから、
顔までは覚えていないけど
「…え？」
「何やってんだよ、ほら行くぞ！」
いつの間にか皐が目の前に立っていて、
俺の腕を引きコートへと入る
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作者ホームページ：なし 作成日時：2015年8月28日 20時
