お世話１７日目 ページ18
試合が終わった俺は、
飲みのが切れたためコートの外にある
自販機へと足を運ばせた
「ここらへんに、
ベンチがあった気がするが……ん？」
人の話し声がした
自販機の影から、
その声がする方向を見ると、
「あいつは…齋藤じゃねえか。」
その隣にいるのは、
同じ真っ黒な髪をした少女、
葉月であった
「あいつら、何の話してんだ？」
盗み聞きは趣味ではないが、
初めて葉月と出会ったあの日、
明らか皐が変だった
何かあるのではないかと考えていたが、
こうして直接話しているってことは、
知り合いか？
すると突然、
葉月が声を荒らげた
「知らなくなんかないでしょ？！」
「チッ…うるさい。
私だって好きでオーストラリアなんか来るかよ。」
皐はキレ気味に言った
相当機嫌が悪いのか、
イライラしているのが目に見える
暫くその場に立って話を聞いていると、
気が収まったのか、声色が静かになった
「ま、あんたがうちの人間だって
気づかれなきゃいい話なんだから。
いつまでも、“齋藤”として、
生きればいいのよ。」
意味有りげなその言葉に、
嫌味な口調
再び影からその場を覗くと
黒い笑顔の葉月
「はっ…二重人格女か。」
どおりで裏の読めねえ
変な女だと思ったぜ
「じゃあね、“朝霧皐”さん？」
先ほどの黒い笑顔は消えて
いつもの笑顔になり、女は立ち去った
「朝…ぎり…？」
あの女、朝霧って言ったよな？
朝霧って言えば…
跡部はその苗字に心当たりがあった
だけど、どこで聞いたのかが思い出せない
「待てよ…朝霧って言ったら確か…」
大手取引会社の社長の名前…
だった気がするな…
珍しい名前だったから、俺様が忘れるはずがねえ
俺は自販機の影から出て、
あいつが座っているベンチまで足を運び、
声をかけた
「おい。」
「なに？」
不機嫌な顔で
俺様を見上げてくる
「ほんの少しだけ話がある。
黙ってないで、そこで聞けよ？」
「…どーせ、盗み聞きでもしたんだろ？
お前のアホ毛が、影から見えてたよ。」
「なっ…」
この女は、後ろに目でもあんのか？！
一度もう白向かなかったじゃねえか…
「なんて冗談だよ。お前、アホだなー。
名前あほべの方が良いんじゃね？」
けらけらと笑う皐
跡部は溜息をついた
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作者ホームページ：なし 作成日時：2015年8月28日 20時
