お世話１１日目 ページ12
一気に距離が近くなったのか
吐息が顔に掛かる
瞑っていた目を
キツく閉じてじっと待つ
「何をやっているんだい？仁王。」
声がして目を開けると
目の前には幸村ではなく、
銀髪の少年
「え？」
幸村は一歩づつ
私たちに歩み寄ってくる
「俺になりきって、
皐にキスしようとするなんて…
どういうつもりなのかな？」
背景にどす黒いオーラを放つ幸村
「引っかかるかどうか
試してみたかっただけじゃき。
そんなに怒ると、コイツに嫌われるプリッ。」
「え…えーっと、つまり…」
私が今キスされそうになってたのは、
幸村じゃなくて仁王だったって事？！
幸村は溜息を付き、
皐を自分の方に引き寄せる
「悪いけど、
渡すつもりはさらさらないよ？」
「分かっているぜよ。
うちの部長は、冗談が通じないのう。」
エレベーターのボタンを押す
すると、チーンと音がして扉が開く
仁王は、入ろうとしたが足を止める
「ああ、そうじゃった。」
手が伸びてきて私の髪を緩く掴む
軽く引っ張られると、小さなリップ音
「また明日、ぜよ。」
再び、チーン。音がして
エレベーターは上へと上がる
取り残された私と幸村は
暫く無言
そして私は、
今さっき仁王に頬にキスされたことを思い出し
幸村から離れようとするが
「何逃げようとしているんだい？
君は油断しすぎなんだよ、周りに。」
「離せ幸村。
私は眠いの、寝るんだよ！」
睨みつけると、
体が宙に浮く感覚
「え？！」
「そうだね。
子供はもう、寝る時間だね。」
目線が高い
体が自由に動かない
幸村はご満足な笑みで
私を見てくる
「眠いんだろう？
なら俺が部屋まで連れて行ってあげるよ。」
「っ離せ！！
お姫様抱っこなんてすんなー!！」
エレベーターの中でも、
泊まっている部屋の階でも、
ずっとお姫様抱っこ
幸村はなんとも思っていないようで
顔色一つ変えない
「あ！ぶちょっ……何やってるんですか？」
「なんだい赤也。
そんなに驚いた顔をして。」
「部長…なんでそんなお」
「そんな…なんだい？」
赤也は言葉を途中でやめて
冷や汗が流れ出した
「や、なんでそんな風に
してるのかなーって…あははは。」
目が泳いで
今にも泣きそうになっている
「なんでって、
俺の遊びど」
「ふざけんなよ？」
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作者ホームページ：なし 作成日時：2015年8月28日 20時
