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ページ43

日を追うごとに、
言葉が、出てこなくなった。




「……どうしよう、
言葉が出てこない。」




ただ返答すればよいだけなのに、
何を書いても、これといった答えが出てこない。


だからその度に、
ページをめくり直し、過去の記憶を辿る。

答えが其処に書いてあるわけではない、
ただ、モヤモヤした気持ちが、
少し、晴れるだけ。





あれだけ楽しくやっていたことなのに、
まるでスランプになったみたいに、
文字が頭に浮かばない…。





-



「ごめんね、柳生くん。」



「いいえ、気になさらないでください。」



「ここ最近、ノート溜めちゃっているから…」




1日や、2日程度なら
どれほど良かったことなのだろう。


それが1週間や2週間も
続いていたのだ。





「何処か、体調が宜しくないのですか?
少し、顔色が優れませんが…。」



「大丈夫、どこも悪くないよ。」



「体調が悪かったなら、
遠慮せずに行ってください。
卒業まで残りわずかですし、
私に相談して下されば、少し気晴らしになるかと思いますので。」



「うん、ありがとう。」




彼の優しさが、時々、痛かった。




確かに私たちは、
あと少しで高校を卒業する。


そうなれば、別々の学校になり、
こうやって言葉を交わす機会など、
なくなってしまうというのに。





「……ねえ、柳生くん。
柳生くんと交換日記、出来て良かったって、
本当に思うよ。」




貴方と知り合えて、
私は本当に、嬉しくて。




「あの時に、図書室にいなかったら
私は出会うことなんて、なかったし。」




例え貴方に
友達以上の感情を抱いたとしても、
私は、この場所を望む。




「だから、
大学へいっても、頑張ってね。」




柳生は、ありがとう。と
微笑みながら言い、
それにつられて小野寺も微笑んだ。







最後の言葉は、
付け足しの、言葉、だった。


私は貴方に、縋ってはいけない、
甘えてはいけない。





君は私に、
十分すぎる、モノをくれたから。


「友達」という存在で、
いてくれたのだから。







「バイバイ、柳生くん。」



掠れ声は、
大勢の声で、かき消された。

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作者ホームページ:なし  作成日時:2015年10月25日 21時

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