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第32話 スタート地点 ページ34

「ありがとう…。」



「いいえ。
それよりも小野寺さん、肩大丈夫ですか?」




小野寺は首を振り、
「大丈夫。」と答えた。




小野寺は下唇を噛み締め
肩で呼吸をしていた。



男子生徒にノートは取られなかったが、
かなりヨレヨレになってしまい、
いつの間にか、床に落ちていた。






柳生はそれを拾い上げ、埃を払い
パラり、と、ページを捲った。



ぼーっとしていた小野寺だったが、
ハッとして、柳生を見上げた。






「返してっ!」



腕を伸ばすと、
柳生はその腕を掴んで、しゃがんでいた彼女を
起き上がらせる。



「スカートが皺になってしまいますよ。
それに、とりあえず深呼吸をしましょう。」



「……勝手に読まないで。」



「小野寺さん、
とりあえず落ち着きましょう。」




肩に手を当てて、同意を求めると
彼女は眉間に皺を寄せたが、
深呼吸はしてくれた。




「落ち着きましたか?」



「あの、だから、返し」



「まさか、
こんなに身近だとは思いませんでした。」





柳生の言葉に小野寺は首を傾げた。
柳生は、ノートを捲りながら、話を続ける。







「気が合う者同士、この日記では
とても会話が弾んでいたと、読み取れます。
__でもある日、会話が途切れていますね、
この「紳士」という人で。」





小野寺は顔を歪める。





「貴方は返事を待っていた、
「いつ来るか。」と
返事を待ち望んでいましたね?」



「柳生くん、やめて。」



「すいません、少し聞いて頂けませんか?」



「もう、良いよ…返事、来ないもの。」






小野寺は「もうね、待ってないから。」と
苦笑いを浮かべた。






「……小野寺さん、
私は貴方に「こんなに身近に」
と言いましたよね?」





柳生はゆっくりと歩み寄り、
小野寺の目の前にノートを差し出した。







「え、あの、柳生くん」




「“個人的な話は伏せて”でしたので、
1ヶ月近くもいないなんてこと、
言い出せなくて申し訳ありません。」






小野寺は驚いた表情で固まっていた。








「____さて、
改めて、自己紹介でもしましょうか。」





小野寺はぎこちなく頷き、柳生を見る。








「柳生比呂士、通称「紳士」です。
はじめまして、ノラさん。」



「小野寺ひより、通称「ノラ」です。
はじめ、まして……紳士さん。」





柳生が手を差し出すと、
小野寺は小さく笑い、握手をした。

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作者ホームページ:なし  作成日時:2015年10月25日 21時

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