第30話 綺麗な文字には ページ32
世の中には、
数知れずの
「偶然」や「必然」が存在する
私は小さな頃から
あまり“そういうこと”は体験した事がなかった
いや、
もしかしたら、
ただ、信じていなかったのかもしれない。
授業中、ノートを取っていると
ある一部だけ、見えない部分があった。
少し体を動かして、
黒板に書かれているところを見ようとするが、
やはり見えない
そんなことと格闘していると
先生は何も言わずに、黒板消しで消してしまった
せめて、一言ぐらい、
言って貰いたいものですね。
クイッと眼鏡を上げ、溜息をついた。
取れなかった部分、どうしましょう…
誰かに見せてもらうといってもー…
柳生は、周りを見た。
誰かいないものか、と、
このクラスで話したことがある人物が…
ふと、隣を見る。
彼女がいましたね、
貸してくれるかどうかはわかりませんが、
やるだけやってみましょう。
柳生は、一つ咳払いをしてから
彼女に声をかけた。
彼女はどうやらぼーっとしていたようで
声をかけると、少し背筋が伸びた。
「すいませんが、ノートを見せてください。」
彼女は、嫌な顔をすることもなく
黙ってノートを私に差し出してくれた。
ありがたくノートを彼女から拝借し、
私はノートを開いた。
白く新しいノートには
綺麗な字で板書が書き写されている。
彼女はとても字が上手なんですね、
見やすさも形も綺麗ですし、
それに、なにかどこ…
私はそこで、ある事に気がつく。
違う人かも知れない
ただ、似ているだけなのかもしれない。
そう、頭では考えているつもりなのに、
心の中では、こうであってほしい。と、
望んでしまう。
「_____ノラ、さん?」
誰にも聞こえないような小さな声で
私は呟く。
「次、こっち消すぞー!」
先生の声で、我に帰り、
彼女にノートを返した。
「すいません小野寺さん、
ありがとうございました。」
無言で受け取ると、
彼女は退屈そうな表情で
青い空を、眺めていた。
ある日の日記で、
彼女はこんな事を言っていたのを思い出す。
「私、学校が嫌いです。
友達がいないからかもしれませんが、
私は静かに、勉強がしたいんです。
でも最近、勉強が身に入らないんです。
授業中も、よく外とか眺めちゃうし…」
今の彼女はまさに、
そのまま…
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作者ホームページ:なし 作成日時:2015年10月25日 21時