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今思えば、無理をしていたのかもしれない。
…いや、無理してたんじゃない。
私が、上手くやれてなかったんだ。
『……は、…っ』
テレビ局の化粧室。
鏡にうつる私の顔は、自分でわかるほどに体調が悪かった。
湿った吐息、熱くなった頰、じっとりとかいた汗。
…熱だ、完全に。
この間子役時代の同期に久しぶりに会って、「昔の方がよかった」と言われた。
…天馬くんは否定してくれたけど…私の中では納得がいってなかったんだと思う。
ムキになって仕事をバカみたいに入れた。
私じゃない誰かになることで、そのことを考えずに済んだからだ。
…それに、きちんと仕事をしてたら…そんなこと、言われないで済む。
……まぁ、なのにこのザマなんだけど。
『あ"〜〜…』
なんとか収録は乗り切った。
もう帰るだけ…なのに、体が動かない。
頭がぐらぐらする。喉が焼けそう。視界がぼやける。
こんなところ誰かに見られたら、その人に迷惑をかけるし心配もさせてしまう。
…頭ではわかってるのに、体が言うことを聞いてくれない。
足の力が抜けてしゃがみこむ。
すると、ドアが開いた音がした。
「えっ、Aさん!?」
『あ……』
細い腕に支えられる。
体に鞭を打って顔を上げると、共演してるアイドルさんのマネージャーさんだった。
…だめ、迷惑かけちゃう…!
「Aさん大丈夫ですか?!熱あるじゃないですか…!」
『だっ、大丈夫です…小鳥遊さん…。』
「大丈夫じゃないですよ!今誰か呼んできます、救急車も呼びましょう。
土井さん…は、いないから、井川さんに連絡しても大丈夫ですか?」
細い腕で、不安に染まった顔で、私を支えてくれている。
…この人は、私とあんまり歳の違わないマネージャーさんだ。
なのに、中身はこんなにも違う。
…上手くやってるつもりだった。
仕事も、勉強も、人間関係も。
けどそれは、私の思い違いだったみたいだ。
…本当は、自分で体調の管理もできてないし、仕事の配分も自分に適してない。
無理をしたら壊れるのは体、体が資本なのに。
結局人に迷惑をかけた。…違う事務所のマネージャーんに介抱されるなんて、言語道断だ。
『…た、小鳥遊さん…、っあの、劇団には…連絡しないでください…と、井川さんに…っ』
「っAさん!」
自分の体から力が抜けるのを、確かに感じた。
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夢花(仮垢) - 夢主ちゃん頑張れ…。あ、どこかは忘れましたが(すみません)、この続編のどこかに「してしまった」の所が「してひまった」になってました。今自分が覚えてるってことは割と最後の方です()中途半端 (2018年11月16日 9時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - 悠斗さん» コメント、並びにご指摘ありがとうございます。早急に訂正させていただきます。大変失礼いたしました。 (2018年4月7日 14時) (レス) id: 92b7e8a327 (このIDを非表示/違反報告)
悠斗(プロフ) - いつも楽しく読んでいます。文字ミスなのですが120ページの「仕事が立て込んでて、MANKAI両へ帰る余裕がなかったのだ。」 のところで『両』ではなく『寮』ですよね。 (2018年4月7日 11時) (レス) id: c0cfb0f959 (このIDを非表示/違反報告)
ますみすみ(プロフ) - いやぁぁぁッ///みすみーッ///本当この作品大好きです!!! (2018年4月3日 0時) (レス) id: 43e6e1321d (このIDを非表示/違反報告)
フユキ(プロフ) - ひぃゃゃゃゃああ!!!三角〜!!!かわいいよ〜〜〜!!! (2018年4月2日 21時) (レス) id: 700d4b33cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:青 | 作成日時:2017年11月6日 22時