【A3!】天才ちゃんの化けの皮。3rd

#108 ページ13

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Settsu side.








「やけに由井ちゃんにやさしくね？臣。」





「そうっスか？臣クンはみんなに優しいからわかんないっスよー。」








晩飯前、太一と2人でテレビを観ながらなんとなく話をする。
目の前にテレビがついているのに、俺の頭にあるのはさっきの光景だけだった。







優しげな目で由井ちゃんをなでる臣。
それを嬉しそうに受け入れる彼女。






…クソ。






由井ちゃんのことが好きなんだと自覚してから、由井ちゃんの身辺がかなり気になっていた。
それはもちろん俳優や声優もだけど…やっぱり劇団員。







警戒すべきは至さんくれぇだと思っていたのに。
なんだってんだ、あの臣の態度。
…何考えてんのかわっかんねぇ。









「あっ、みてみて万チャン！新しいドラマの予告っすよ！
またAチャン出るんスねぇ…！！！」







「あ？」








太一が嬉しそうにテレビに齧り付くから、俺もそっちを観てみる。
すると、そこには不敵な笑みを浮かべた大人っぽい由井ちゃんの姿。






柔らかい髪の毛は巻かれていて、纏っているのはタイトなミニドレス。
口元には紅いルージュが引かれていて…なんつーか、色っぽい。








「へぇ…今度はヨーロッパ舞台のスパイものなんすねぇ…。
あ！共演に都築京介！やっぱAチャンすごいっす〜〜〜！！」






「しらね。」






「なんか、ピカレスクみたいで嬉しいッス！」









スマホを開いて、自然な流れで写真フォルダを開く。
目当ては、さっき撮った由井ちゃんの赤面。







…さっきまで、手を伸ばせば触れられる距離にいたのに。
やっぱり由井ちゃんと俺の距離は、会った時からちっとも変わっていない。








由井ちゃんがここに来た頃、天馬との距離に嫉妬していた。
金銭感覚が合うからってことでよく3人で買い物とかに行っていたけど…天馬の扱いと俺の扱いには差があった。







由井ちゃんが、年相応の笑顔を向けるのは天馬だけ。
自分の練習に付き合わせるのも天馬だけ。
いたずらを仕掛けるのも天馬だけだし、寝ぼけて抱きつくのも天馬だけだ。







こう考えると、やっぱり天馬が羨ましくて仕方がない。
自分でも女々しい感情であることはわかってはいるが…こいつはどうにもならない。







なのに、そこに臣まで入るって？
冗談じゃねぇ。






テレビに目を向けると、凛々しい顔で拳銃を向ける由井ちゃんの姿。








「どぉーしろってんだよ、マジで。」

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