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『ごめん、付き合えない』
「入る隙も与えられない？」
『うん。他に好きな人、居るから』
「…そっか、はっきり断ってくれてありがとう」
決して逸らされることのなかった目がゆらりと伏せられ、彼が深く腰掛けたことで椅子がぎしりと唸る。表情は相も変わらず笑みを浮かべているけれど、微かに憂いを帯びたその笑顔は、ほんの少しだけ、いつかの雨の日のゾムに似ていた。
着崩すことなくきっちり着た制服、染めたことのない短くて黒い髪、真面目でどこまでも爽やかな彼は、私が恋している人と正反対だった。
きっと今この返事を頷いたとしても、楽しくて幸せな日々を送れるとは思う。それでも私はゾムが良い。他の誰でもなく、ゾムしか考えられへんねん。ごめんね。
先程までの談笑が嘘みたいに静まり返る教室。耳に届くのは遠くから聞こえてくる微かな蝉の声と運動部の声出しや頬を撫ぜる柔らかな風の音。
…あー、この空気、私が振られたときと同じや。同じ痛みを、私は与えてしまった。
「そんな顔しないでよ。別に悪い事をしたわけじゃないだろ？」
『そうやけど…』
「…じゃあ罪悪感があるなら、ひとつだけ俺も狡いことしちゃお」
彼はもう一度目を伏せたあとゆっくりと立ち上がり、私の頬に手を添える。あ、と思った時にはもう目と鼻の先に彼の端整な顔があった。 何かを考える暇もなく、抵抗する隙もなく唇が触れる瞬間、
がらっ
突然現れた音に驚き音の出処を見ると、そこには呆然と突っ立っている大先生とゾムがいた。
……………やっべ。
やばいやばいやばいやばい。え、見られた？見てたよなあれ！棒立ちやもんなぁ！そっち側から見たら絶対事後やもんなぁ！してへんけど！！
私が止まらぬ手汗を拭って必死に冷静を保とうとする中、いつの間にか離れていた彼は「よう」と当然のように片手を上げた。え、こいつメンタルどんだけ屈強なん？
そしてそのままヨシナリくんは流れるように教室から出ていった。残された私達は少しだけ目を見合わせて、なるべくいつものように会話が出来るように努めた。
あぁ、それでもゾムのことが見れない。誤解されたかもしれない。ビッチだって思われたかもしれない。どうしよう。
大先生はいつも通り変わらず接してくれるけれど、ゾムの口数が少ない。私が一切見れないことをなんとなく察してくれたのか、話の流れで生徒会誌に向かう時の道取りは、大先生が常に真ん中を陣してくれた。
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悠亜(プロフ) - guririさん» コメントありがとうございます！きゅんきゅんして頂き幸いです…続編もよろしければお楽しみください！読了ありがとうございます！ (2019年11月20日 23時) (
レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
guriri - ヤバいめっちゃキュンキュンする．．．！ (2019年11月19日 20時) (レス) id: 5d86136675 (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - 友希那さん» 友希那さんコメントありがとうございます！毎日更新出来なくて申し訳ありません…。楽しみにして頂けてとても嬉しいです。今後もキュンキュン出来るような展開に持っていきたいのでぜひよろしくお願いします！ありがとうございます！ (2019年8月6日 19時) (レス) id: 66cdfbcc74 (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - ひーちゃんさん» ひーちゃんさんコメントありがとうございます！狂犬組良いですよね、とても夏が似合う…。そろそろその2人も出そうと思ってたのでリクエスト嬉しいです。ありがとうございます！ (2019年8月6日 19時) (レス) id: 66cdfbcc74 (このIDを非表示/違反報告)
友希那 - ｷｬｰｰｰｰ!!毎日コツコツ更新チェックしながら見てるものです。いつもキュンキュンさせてもらってますよぉ！これからも応援してます! (2019年8月4日 18時) (レス) id: 43ce5d2e93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：悠亜 | 作成日時：2019年5月8日 21時
