45 ページ47
-主人公side-
休憩も終わり、会議が再開される。トントンに新しく渡された書類をこなしていると、あっという間に1時間が過ぎて下校時刻となった。だらだらと身支度を始めて下駄箱に向かい、送ってく、と言ったコネシマとゾムと3人で夜の静寂に包まれた道を歩く。
先程教室で話していた人力車のような乗り方を提案されたが、鞄だけ荷台に乗せてもらってゆっくりと歩いた。
あぁ、懐かしいなぁこの感覚。なんだか久しぶりに3人で帰った気がする。
いつも通りの帰り道を並んで歩いて、あの交差点へ。コネシマとゾムとはここで別方向になるのでコネシマから荷物を受け取ろうとしたが、どうやら今日は家の前まで送ってくれるらしい。…迷惑かけっぱなしやなぁ。
『ごめんね、迷惑かけるわ』
「あん？気にせんでええねんそんなん。俺らもこんな時間まで待たせたしな」
「せやで、お前いい加減その気にしいな性格直しや」
『…良い友達持ったわ』
そんな憂いも、ニカッと笑う2人に絆されてしまう。その後も私の家まで色んな話をして、今度こそ鞄を受け取り手を振って2人に別れを告げて家に入る。親は仕事が忙しくてあまり家にいないので、急に静かになった感覚に寂しさが募った。
その刹那、外から「なんでお前が前やねん！」「ええやん、はよ乗れ」とガチャガチャした音と声が聞こえて、アホやなぁ、とどこか穏やかな気持ちになった。きっと2ケツしようとしてるんやろうな。捕まんなよ。いやむしろ捕まれ。
部屋に入って鞄を置いてベッドに飛び込み、今日の出来事を反芻する。
『…諦める、はずやってんけどなぁ』
決意がぐちゃぐちゃになってしまったような感覚。あの時廊下でシャオちゃんに言われた言葉が頭から離れない。
なぁ、私はどうしたらええんかな。諦めた方がええの？諦めない方がええの？
体育館で見た辛そうな顔、肩に回された逞しい腕、お姫様抱っこをされたときに見た笑顔、保健室で見た優しい瞳。全部、全部忘れられない。
まだ残っている包帯を巻いてくれた手の感覚と頭の撫で方。思い出す度に顔が熱くなって胸が締め付けられる。いつだか忘れていた、忘れようとしていた気持ち。
あぁ、私はきっと、全身で恋をしている。
どうか許されるなら、と自分の手を握りしめる。その瞬間、軽快な着信音と共にスマホが震える。モバイルバッテリーに繋いでいたスマホを取り出して、一拍置いて通話に出る。
電子機器越しの声はいつもよりちょっとだけ低く、少し擽ったかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1002人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サイパス - 悠亜さん» (°д°;;)ﾊﾜﾜﾜﾜﾜ 見るの遅くなってしまってごめんなさい(;´д｀)
ありがとうございます（＞＜。）。。 (2019年5月6日 23時) (携帯から) (
レス) id: 30187f6537 (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - 名無しのキッコーマンさん» 名無しのキッコーマンさんコメントありがとうございます！一途な子素敵ですよね。恋は自覚するまでも時間を要することもあるので、いつか体験したときにそっとこの小説を思い出してくれたら嬉しいです。ありがとうございます！ (2019年5月5日 22時) (レス) id: 66cdfbcc74 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのキッコーマン(プロフ) - 片想い、切ないですね。僕は恋を体験したことないけど、夢主ちゃんみたいに一途な子に好かれてたら嬉しく思います! (2019年5月5日 19時) (レス) id: 6ae7a02465 (このIDを非表示/違反報告)
サイパス - あっ！言い忘れてました…
お願いいたします (2019年5月5日 1時) (携帯から) (レス) id: 30187f6537 (このIDを非表示/違反報告)
サイパス - リクエストしていいですか？
もしよかったらシャオちゃんとの恋愛小説を描いてください/// (2019年5月5日 1時) (携帯から) (レス) id: 30187f6537 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：悠亜 | 作成日時：2019年4月19日 11時
