［イ・ジュンギ］一枝梅 異聞 四.

165）騒ぎ ページ15

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一方、城の方ではとある騒ぎが起きていた。

「何？A様がいない？」
侍女から聞いた加納が「勘弁してくれよ〜、こんな時に」と泣きそうになった。
城からいなくなるのは日常茶飯事だが、使節団の歓迎を兼ねた祝いの席にも出ないとは……。

「一体、どこ行ったんだ。探せ！A様を！」
加納がやっきになっていると、「探さなくてもよい」と樋口が現れた。
「樋口様！」
「殿がA様にはもう構わなくていいとおっしゃった」
「え？」
「そういうことだ」
「そういうことって？」
加納にはさっぱりわからない。

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「お大事に」
とある農家の家で、Aは幼子の診察を終えると立ち上がった。
「A様、いつもありがとうございます」
「これは、今日採れた芋ですが……」

差し出されたのは、やせ細った芋だった。
一昨年まで不作続きで、やっと作物が育ち始めたばかりだったが、まだまだ採れる野菜に元気がない。
それでもこの町の人達にとっては大切な食糧だ。

「気持ちだけありがたく受け取っておきます。それは、この子に食べさせてあげてください。きっと元気になりますよ」
Aはニッコリと微笑んだ。

すると近所の人がダダッとやって来て「あ！本当にA様がいる！」と言った。
「これ！無礼だぞ！」とそこの家人が嗜めた。
「いや、だって今日は宴の日でしょ？いいんですか？こんなところにいて」
「そうですよ、きっとお城では大騒ぎになってますよ？」
近所の人が次々と集まって来てAを心配した。
「大丈夫ですよ」
Aは思わず笑ってしまった。
どうして皆わざわざ心配して出て来るのかわからない。

「今日の主役は隼人と姉上なんですから」
Aはそう説明をした。

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