時透無一郎 ページ5
ふんわりとした笑顔を浮かべる君に、私は胸が痛くなった。私は勝手に皆から逃げたというのに。
こんなにも弱虫な私を、何故愛してくれるのだろう。
つきつきと心臓が痛んでいく。ドロドロとした何かが私の中から嗚咽と共に溢れ出るのが解った。
「ぅ、ぁ…ごめ、んなさい…私、みんなのこと、信用…けほっ…出来なかった…!」
「っA、泣かないで。Aが泣いたら皆悲しくなる。」
「時透君、ごめんね、私、貴方の気持ちに応える事は出来ない。ごめんなさい、本当に――――」
「馬鹿。」
不意に、私の言葉が遮られた。それと同時に、頬に柔らかな感触があった。
「謝らないでよ。Aは何も悪くない。僕たちがAにちゃんと事実を伝えられなかったから。」
本当に申し訳なさそうな顔をする彼。
「事実…?」
「伊黒さん、だったかな、その人が甘露寺さんと抱擁していたのは、血鬼術にかかったからなんだ。決して浮気とかじゃないんだよ。」
「そう、だったの。」
そんな血鬼術があるのね、と軽く笑いながら、私は時透君の手を取った。
「っ、A…?」
「それでもね、私は貴方と恋仲になりたい。」
「は、何で、」
「私のことが好きなのでしょう?それなのに必死で伊黒さんのことを庇うなんて、凄いことだと私は思うわ。」
――――彼女の綺麗な笑みに、誰もが心奪われた――――
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作者名:如月眠 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2020年1月11日 10時