171【親友、そしてライバルに】 ページ5
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「殺したって……誰がだ？」
そう聞くと、Aは考える素振りを見せる。
「んー、最終的に殺したのは渚だよ。
だけど、あれはみんなが殺したと言って良いと思う」
「…どういうことだ？」
曖昧な返答に思わず質問すると、Aは丁寧に説明してくれた。
「せんせーを殺したのは渚。
だけど、その場にはE組のみんなが、1人1人せんせーの触手を握っていた。
だから、みんなが殺したと言っていいと思うんだよね。
せんせーを殺すということもみんなで決めたことだし、せんせーもそれを了承してくれた。
地面に自ら横たわって、最期の出欠を取るせんせーに泣きながら返事をした。
そして最後、みんなの代表となった渚がせんせーの心臓を刺す。
……とても綺麗な最期でさ。
「殺す」という言葉の本当の意味を知れたし、今までの大きな目標を達成できたという喜びもあった。
…けどやっぱ、別れるのって辛いから。
……泣いてることしか、できなくて。
けど、今は殺せんせーを殺して良かったと思ってる。
せんせーが与えてくれた最後の課題を、みんなで達成できたから」
Aは笑顔でそう話した。
…今まで、たくさんの人を失ってきたA。
失うことを何よりも恐れていたのに、そんなAが笑顔で「殺してよかった」と言っているんだ。
驚きもするだろう。
だけど____
「…Aが笑顔なら、それでいいさ」
Aには幸せになってほしい。
不幸をたくさん味わってきたのだから、幸せになってもらわなきゃ俺が困るんだ。
…いや、何としてでも「幸せだ」と笑わせてやりたい。
Aはどこか遠くを見つめながら、また俺に話しかけた。
「…俺さ、たまに殺せんせーの声が聞こえるんだよ。
あのヌルフフフ、って笑い声が、耳の奥に響く。
俺が悩んでいるときは、いつも出てきてくれる。
…それが幻聴とは思えないんんだ。
殺せんせーが、ちゃんと背中を押してくれているんだとなんとなくわかる。
いつだって俺を支えてくれたのは、征十郎も殺せんせーも同じだ」
今日一番の笑顔でそう言うAに、俺も自然と笑顔になる。
…俺だって、いつも支えられてばかり。
「これで話は終了。ごめんな、こんな話長々と」
「いや、有意義な時間だったよ。
話してくれてありがとう」
椅子から立ち上がり職員室を出て行くAの後に続き、俺も職員室を出た。
まだ何か案内したいところがあるみたいなので、俺はAのあとを追った。
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作者名：赤紅 (あかべに) | 作成日時：2016年10月16日 15時
