90【過去と面影】※ ページ4
俺は包み隠さず話した。
全て、全て自分の口で話した。
Aは頷きながら、黙って聞いてくれた。
.
「…というわけなんだが……」
全てを話し終え、目線を下に落とす。
Aは今どんな顔をしているのだろう。
嫌な考えが頭の中で回っていて、顔を上げたくなかった。
ちらりと時計を見ると、俺たちが会ってから20分ほど経っていた。
本来の待ち合わせ時刻だ。
時間が削られたわけではない。
そう考えている間も、心臓はドクドクと大きく脈打っていた。
どうしよう。
やっぱり話さない方が良かったか……？
らしくない。
こんなにも動揺しているなんて。
Aは焦りが滲む俺の顔を無理やり正面に向け、こう言い放った。
「____なんだ。それで悩んでたのか。別に俺は何も気にしないから、お前はお前らしくいればいいよ」
その言葉に、心の重荷が吹き飛んで行った。
____いつもそう。
Aが優しすぎるから甘えてしまうんだ。
俺は完全にAに依存してしまっている。
Aから突き放されてしまったら、その瞬間に俺は壊れてしまうだろう。
強がっているくせに、平気な顔してるくせに、
一番脆いのは俺なんだ。
そんな俺さえも受け入れてくれたAは、俺のことをどう思ってるのだろう。
Aがいつか俺といるのが面倒になったら、俺はお前から離れるよ。
…Aが望むなら、そうするさ。
「(離れたら壊れるけどね)」
そういうズルい手を使って、Aを俺から離れられないようにしている。
優しいAは俺から離れることができないだろう、と。
そしてAに執着している。
ずっと、ずっとだ。
もしもAが本心で俺と一緒にいたいと思ってるのなら、俺を何処かに閉じ込めてよ。
Aしか見えないように。
貴方にだけ「俺」を捧げるから。
これは「愛」なんかじゃない。
友情も愛情も無感情も通り越した、その先にある感情。
依存と執着と狂気にまみれた、俺とAだけが持っている感情。
その感情を何と呼べばいいのか、俺にはよく分からない。
「俺」が「僕」に侵食される前に、その感情を解放させて。
.
「_____俺が壊れたとしても、Aは受け入れてくれるか？」
ただ一つ呟いた。
「_____え？」
Aは、目を見開き驚いていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 16人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
赤紅 (あかべに)(プロフ) - 鯉さん» コメントありがとうございます…！そう言っていただけて本当に嬉しいです。これからも頑張りますのでどうぞ宜しくお願い致します> < (2016年8月21日 19時) (
レス) id: 6473e5a0d8 (このIDを非表示/違反報告)
鯉(プロフ) - この小説は大好きです!! これからも更新頑張ってください!! (2016年8月21日 19時) (レス) id: 586c815007 (このIDを非表示/違反報告)
赤紅 (あかべに)(プロフ) - 零07*さん» うああ、ありがとうございますっ…！すごく嬉しいです>< 頑張って更新します！ (2016年8月9日 20時) (レス) id: 6473e5a0d8 (このIDを非表示/違反報告)
零07* - この小説めちゃくちゃ面白いですね！！続きが楽しみです (2016年8月9日 16時) (レス) id: 6b42d2d23c (このIDを非表示/違反報告)
赤紅 (あかべに)(プロフ) - カルマくん、テツくん、キド大好き人間さん» あああコメントありがとうございます！！涙腺崩壊とか笑ったとか本当に嬉しいです…>//< 応援ありがとうございます。これからも頑張ります！！ (2016年8月7日 4時) (レス) id: 6473e5a0d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：赤紅 (あかべに) | 作成日時：2016年7月9日 5時
