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37【過去と面影】 ページ45

「うわぁ、ここも広い……」

案内されて辿り着いたシャワー室は、他の部屋と同じ様に広くて大きかった。

何人入れるんだろう…?


着ていた服を脱いで、畳んで置いておく。

浴室に入り、大きな鏡の前に立つ。
鏡に映った自分の身体は、痣や切り傷で酷く汚れていた。

もう癒えた頰の傷を撫でる。
初めて殴られた時のものだ。

実際、もう痕は残っていない。

だけど俺には大きな痣が見える。
俺の心の傷が、確かにそこにある。


「……」

でも駄目だ。
弱音なんか吐いちゃ。

怒られるからじゃない。

吐き出したら止まらなくなる。
俺の心が更に弱くなってしまう。

強い人になりたいんだ。

何にも負けない、動じない強い心を。


「征十郎は凄いな…」


今日会ったばかりなのに、優しく接してくれて、俺が泣き止むまで撫でてくれて。
俺が言葉に詰まらないように、話を切り出してくれて。


「優しい…」

普通の友達でも、きっとここまではしてくれないだろう。

初めての嬉しさ、楽しさ、期待。
そんな感情が全て合わさって、何とも言えない感情が芽生える。

俺は友達が出来たことがない。
だからこんな感情も知らない。

毎日の様に会える訳ではない。
もしかしたらいつか離れ離れになるかも。

でも、それでももっと一緒に居たい。

征十郎といると凄く落ち着く。安心する。
辛いことも痛みも忘れられる。

楽しい。

真っ暗で冷たい物置小屋に一人でいるより、二人でいる方がいい。

征十郎は今まで見てきた人達とは違うんだ。

人間はいつも信じられなかった。何を考えているのかも分からないし、俺の事なんかいっそのこと忘れて欲しかった。

だけど悪口は言われ続ける。
それにも慣れちゃって、もういいやって諦めてた。

だけど、唯一信じられた。



征十郎は本音で話してくれている。
裏も黒さも何も見えない。

もっともっと色んな話がしたいんだ。


「…また会えるかな。」


(ぬる)めのお湯を浴びながら、これから先のことについて考える。

確証はないけれど、またきっと会える。

俺は楽しい話なんかもできない。
だけど征十郎の笑顔をもっと見たい。嫌じゃなければ、征十郎の話もききたい。



「(…よくばり、かなぁ)」

自然と頬が緩み、あたたかくてしあわせな気持ちになった。

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設定タグ:黒バス , 暗殺教室 , カゲプロ   
作品ジャンル:アニメ
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赤紅 (あかべに)(プロフ) - RUANさんじゃないですか!!← いつもありがとうございます…!!頑張って続き更新します!! (2016年5月11日 22時) (レス) id: 02723e85f4 (このIDを非表示/違反報告)
*RUAN*(プロフ) - 凄く続きが気になります!!頑張ってください!! (2016年5月11日 20時) (レス) id: 5d1d7a2d87 (このIDを非表示/違反報告)
赤紅 (あかべに)(プロフ) - ありがとうございます!!いつもコメントありがとうございます(´v` *)これからも引き続き頑張ります!! (2016年5月8日 11時) (レス) id: 02723e85f4 (このIDを非表示/違反報告)
死神狐(プロフ) - すごく面白いです!更新頑張ってください (2016年5月8日 11時) (レス) id: d5f3e8d7c6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:赤紅 (あかべに) | 作成日時:2016年3月14日 1時

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