序章の終章 ページ10
「咲良、全然起きてくれないんですけど……」
帰りの車にて。後部座席のトーヤは、隣で眠っている咲良を見てため息をついた。
「変な薬とか飲まされてないかな……」
「大丈夫ですよ。多分、あの人達にそんな度胸はありません」
運転席で、クロエが小さく笑う。トーヤの脳裏に先程の3人組が浮かんだ。
「……あの人達、貴方を知ってるみたいでしたね」
クロエの名前を聞いた時、相手は明らかに動揺していた。……間違いない、とトーヤは思う。どんな事件も解決出来る、都市伝説のような店。
「……それが、クロエさん達なんですね」
行きでトーヤが座っていた助手席では、黄泉が「くかー……」と心地良さそうに眠っていた。初め会った時には既に酔っているらしかったが、想像以上に酒が回っていたらしい。疲れたー！！と叫ぶなり突然突っ伏して、すやすや眠り出してしまったのだ。
「どんな事件も、とはいきませんがね。今回は君だったから助けたんです」
飴玉を口に放り込んだその右手には、傷の跡など見当たらなかった。
「それはやっぱり、俺が……色能者だから？」
それぞれの色にまつわる能力――“
“色能者”とは、それを持つ者の事である。
「クロエさんも黄泉さんもハイドくんも色能者。貴方が俺に協力しようと言ったのは、俺が色能者だと知っていたから……」
自分で呟いておいて、思わずその可能性を否定する。
こんな広い世界で、自分達と同類である人間に出会えるなんて、トーヤには到底信じられない。
なのにそのあり得ない呟きを、その男はあっさり肯定した。
「ええ。私は黒の色能者。黄泉さんやハイド君のは……まぁ、いずれ知る時が来ます」
「え、ほんとですか！？……あ、案外見つかるんですね、仲間って……」
「仲間、ねぇ……そう簡単でもないですけど」
日も暮れた薄闇の中、車はトーヤ達のアパートに止まった。
「……仲間が欲しいのなら、もっと会わせてあげられますが」
「え！？そんな、一人会えただけでも凄いってのに……！？」
送ってくれた事に感謝しつつ、興味深そうにするトーヤに、クロエは言った。
「また、バーへ来てくれますか」
バーで暮らす皆を思い出して、クロエは微笑む。きっと2人なら、上手くやっていけるはずだ。
「咲良さんも連れて。……では」
軽く会釈をした後、クロエの車が走り出す。
トーヤは見えなくなるまで、車を見送っていた。
＊
これは、今から始まる物語の、ほんの序章――。
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くろーさぎ(プロフ) - ありがとうございます！！これからもよろしくお願い致します♪ (2019年4月26日 19時) (
レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
奈狐(プロフ) - 語彙力が凄く羨ましくです…面白いですね！ (2019年4月26日 19時) (レス) id: 70cd26f670 (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - ありがとうございます！！嬉しいです……！！ (2019年4月22日 16時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんたそ(プロフ) - 私の小説より面白いです。語彙力あってうらやましいＺ！(*≧∇≦)ﾉ (2019年4月21日 18時) (レス) id: 0d77839cd9 (このIDを非表示/違反報告)
ミーシャ - https://uranai.nosv.org/u.php/novel/ilodoli/ (2019年4月13日 14時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
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