井戸のある場所 ページ5
説明し終え、トーヤはマスターに頼んだ。
「お願いです!咲良を探して下さい!」
「面倒だから嫌です」
平然と返して、マスターはため息をつく。
「面倒って!解決してくれるんじゃ……」
「何を勘違いしてるか知りませんが……ここは普通のバーですよ」
「いやいや、あんな思わせぶりな事言っておいて違うはずないでしょ!?頼みますよ!」
土下座しそうな勢いのトーヤに、黄泉は呆れ顔で
「話は聞くって言ったんだし、願いを叶えてあげても良いんじゃない?クロエ」
マスターことクロエは首を振る。
「面白そうとは思いましたが……報酬も無しで働くのはねぇ」
「トーヤくん、お菓子持ってる?」
「え?いや、持ってないです……」
唐突に訊かれ、トーヤは戸惑う。
「で、でも出来る限りの事はしますよ!報酬は……あ!田舎の婆ちゃんが作ってくれたお餅、あれ凄く美味しいんですよ!それで良かったらいくらでも」
クロエが、ピクッと反応した。
「……餅?」
「はい!餡で包んであって、凄く甘いですよ!」
何やら考え込んだクロエに、黄泉がもう一押し。
「報酬、分けなくて良いよ。譲るよ」
「……まぁ、悪くはない話ですね」
良かった……!と安心するトーヤと黄泉に、クロエは言った。
「それじゃ、さっそく行きましょうか」
「はい!でも、どこへ行くんです?」
黄泉が、トーヤの問いに答えた。
「ヒント!井戸のある所だよ!」
「井戸……?」
*
辿り着いたのは灰色屋根の一軒家。
“土井”という表札を見て、トーヤは納得した。
「それで井戸か。……あの、ここは誰の……?」
「すみません、いらっしゃいますかー」
マスターが呼びかける。しばしの無言の後、インターホンから声が返って来た。
『……はい』
「私です、少し話が――」
『お断りします』
「まだ何も言ってませんよ」
マスターは呆れ顔。後ろから黄泉が話しかける。
「やっほー!久しぶり!」
『……!!その声は、黄泉さん!?』
ドア越しの相手は動揺した様子。
「ちょっと頼みたい事があって!」
『でも……どうせまた、能力を使えって言うんでしょ?』
「そうなんだよー!また依頼人が来て。引き受けてくれるよね?」
一瞬躊躇った後、相手はため息をつく。
『……分かったよ』
「ありがとうございます、お邪魔しても?」
『良いけど、クロエの為じゃない。黄泉さんの為だからな』
冷たく言ってドアを開けたのは、グレーのジャージを着たボサボサ頭の少年だった。
「どうぞ」
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くろーさぎ(プロフ) - ありがとうございます!!これからもよろしくお願い致します♪ (2019年4月26日 19時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
奈狐(プロフ) - 語彙力が凄く羨ましくです…面白いですね! (2019年4月26日 19時) (レス) id: 70cd26f670 (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - ありがとうございます!!嬉しいです……!! (2019年4月22日 16時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんたそ(プロフ) - 私の小説より面白いです。語彙力あってうらやましいZ!(*≧∇≦)ノ (2019年4月21日 18時) (レス) id: 0d77839cd9 (このIDを非表示/違反報告)
ミーシャ - https://uranai.nosv.org/u.php/novel/ilodoli/ (2019年4月13日 14時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
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