ノートの行方 ページ19
体育館に向かう途中、誰かに後ろから呼び止められた。
「あ、ちょっと……！」
振り返ると、一人の男の人が居た。傍らには幼い女の子の姿もある。
「えーと……」
誰だっけこの人？と、見知らぬ相手を不信に思う私に、彼は「あ、いや、怪しい者じゃなくて！」と、着ていたコートの内側を探る。
「俺、トーヤっていいます。マスターの……クロエさんの、知り合いなんですけど……これ」
差し出されたのはえんじ色の、使い古されたノート。間違いなく私のものである。
「あ！！それ……」
「うちの咲良が持って来ちゃったみたいで……すいませんでした！！」
私に向かって頭を下げるトーヤさんに、「ほら、お前も！！」と促され、隣の少女……咲良ちゃんも小さくぺこっと頭を下げた。
「い、いえ……！！あ、あの、この中身って見ましたか……？」
「見てませんよ。クロエさんに聞いて、すぐここまで来たんです」
「そうなんですか……良かった」
私はホッと安堵の息をついた。このノートは私にとって宝物で、だからこそ他人に中身を見られるわけにはいかないのだ。
「茜ー！何してるの、授業始まるよ……あっ」
葵と、トーヤさんの目が合って、二人は反射的に会釈をする。私達4人の間に、少しだけ気まずい空気が流れた。
「えっと……じゃあ私、授業始まるので、これで」「あ、あぁ。俺達も帰ります」
咲良ちゃんが小さく手を振ってくれていたので、私はそれに「バイバイ」と返して、体育館に向かった。
＊
キーンコーンカーンコーン……。
「よし、じゃあ体育の授業始めるぞ」
(うへぇマジで……)
何でまたあんたなんだよ工藤先生、と私はうんざりしていた。よりにもよってこの先生か！！数学での一件で気まずいのに！
「体育では怪我をする危険性があるから、ふざけたり寝ぼけたりしないようになー」
その言葉が誰に向けられたものなのか、先生の方を見るまでもなく分かる。顔を上げたら目が合いそうで嫌だ。
「じゃあ用具の場所を説明するから、まずは1班からな」
先生と、1班の数名が体育館から出ていく。用具入れは体育館のすぐ隣にあるのだ。
(あぁやば、気を抜いたら寝そう……)
次寝たら廊下に立たされるどころじゃないだろうな、と私は慌てて首を振り、眠気を覚まそうとしてみる。
「……ねぇ茜」
「……んー？何、葵」
隣の葵が、閉められた扉を見ながら、神妙な顔で呟いた。
「あれって……」
ピシッ……！！
体育館の扉に、氷のような亀裂が入った。
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くろーさぎ(プロフ) - ありがとうございます！！これからもよろしくお願い致します♪ (2019年4月26日 19時) (
レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
奈狐(プロフ) - 語彙力が凄く羨ましくです…面白いですね！ (2019年4月26日 19時) (レス) id: 70cd26f670 (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - ありがとうございます！！嬉しいです……！！ (2019年4月22日 16時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんたそ(プロフ) - 私の小説より面白いです。語彙力あってうらやましいＺ！(*≧∇≦)ﾉ (2019年4月21日 18時) (レス) id: 0d77839cd9 (このIDを非表示/違反報告)
ミーシャ - https://uranai.nosv.org/u.php/novel/ilodoli/ (2019年4月13日 14時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
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