青年と少女は 前編 ページ15
「一つ、良いですか？」
口直しに出されたカクテルに手を伸ばしながら、トーヤは言った。
「クロエさんは、色能者なんですよね？」
返事はないものの、聞いているのだろう。
「俺、そんな都合良く仲間と出会えるとか思ってませんでした。というか、正直今でも信じられませんよ」
「探せば、意外と見つかるかもしれないですよ」
見つかるわけ、ないだろ……と呟きそうになるのを堪えて、トーヤはカクテルを飲んだ。
「……俺も、変われてたのかな。仲間がいたら」
いても変わらなかったのだろうか。家族や友人と別れる未来は。誰か一人とでも出会えていたら、咲良も今頃は家族と幸せに暮らしていたのか。
「咲良さんは、違うんですか？」
「あいつはただの親戚です。……でもどうせバレてますよね。咲良も同じって」
「元気そうで何より。攫われた事を何とも思ってなさそうでしたね」
本当に他人をよく見ている、とトーヤは感じた。咲良が誘拐される事などあり得ない。咲良はあの3人を殺害する事も出来たというのに。
「何故それをしなかったんです？」
「あ、やっぱり分かってましたか。理由は教えてくれませんでした。何でわざと捕まったか」
クロエほどになれば、理由などすぐ察しがつくのだろうか。他人の気持ちに疎い事を自覚しているトーヤには、気まぐれな咲良の心情を理解は出来ない。
「……“事情”というのを、まだ聞かせて貰っていませんでしたね」
訊かれる事を予測していたのか、トーヤの表情は変わらなかった。「そういえばそうでしたね」と言いながら、グラスを再度上げる。
「……少し長くなるし、面白くもないですけど」
カクテルを一口飲む。口下手な自分が、クロエに上手く説明出来るように。
「俺と咲良は、或る田舎町に生まれました……」
＊
町外れのとある大きな建物。植物園のようなそこの扉を、昼間から叩く者がいた。
「咲良！」
開いた扉から顔を出した青年は、部屋の中の幼い少女に呼びかけた。
「……お兄ちゃん」
無表情の少女は少しだけ、彼を見て頬を緩めた。
「今日も元気そうだな。昼食はもう食べたか？」「……うん。ちょうど食べ終わった所」
花が美しく咲く室内を見渡して、彼は頷く。
「みたいだな。あ、この本買って来たんだが」「……！」
青年の取り出した『花姫様』という本に、少女は微かに瞳を輝かせた。
「前に読みたいって言ってたからな」
少女を膝の上に乗せ、青年は本を開く。
「昔々、或る所に――」
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くろーさぎ(プロフ) - ありがとうございます！！これからもよろしくお願い致します♪ (2019年4月26日 19時) (
レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
奈狐(プロフ) - 語彙力が凄く羨ましくです…面白いですね！ (2019年4月26日 19時) (レス) id: 70cd26f670 (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - ありがとうございます！！嬉しいです……！！ (2019年4月22日 16時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんたそ(プロフ) - 私の小説より面白いです。語彙力あってうらやましいＺ！(*≧∇≦)ﾉ (2019年4月21日 18時) (レス) id: 0d77839cd9 (このIDを非表示/違反報告)
ミーシャ - https://uranai.nosv.org/u.php/novel/ilodoli/ (2019年4月13日 14時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
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