粗品ですが ページ14
「まさか昨日の今日で来てくれるとは思いませんでしたよ」
カウンターにて、クロエが僅かにからかうように言った。
「すいません、昨日はちゃんと礼も言えなくて」
そう言って肩をすくめるトーヤ。二度目とはいえまだまだバーの雰囲気に馴染めない様子だ。そもそも家出同然で田舎町の実家を出、まだ日も浅く咲良の面倒を見るのに手一杯な彼が都会慣れしていないのも仕方がない。
「迷惑なわけないでしょう。歓迎しますよ」
「ありがとうございます。でも俺、ろくに酒も飲めないし、こんな時間に急に来たのも……」
先程僅かに聞こえて来たのは、先日黄泉の言っていた子供の声だろうか。
「……そういえば、前に言ってた子供って……」「あぁ、また今度紹介しますよ。……それは？」
トーヤが取り出した白い包みに、クロエは僅かに興味を持ったように訊ねた。
「お礼のお餅です。これ本当に凄く美味しくて！家を出る時に持って来た、数少ない物の一つですが、是非黄泉さん達とも分けて下さい！」
婆ちゃんの餅はほんと美味しいんですよ！と自慢げにトーヤは言う。大好きだった婆ちゃんと別れた事が、トーヤが町を出た事の唯一の心残りだ。
ありがとうございます、と言いながら、クロエは包装紙を取ると、餅を一つ食べた。
「どうです？美味しいでしょ！？」
「んむ……」
決まって他人と合わせないクロエの瞳が、一瞬、輝いたような気がした。
「……本当に、美味しいです。普通の餅より何倍も甘い」
カウンターに用意した自分用の黒い酒を、ぐいっと一気に呷る。半分ほど中身のなくなったグラスを、カウンターに置いたクロエに、トーヤがふと訊いた。
「それ、何のお酒なんです？」
バーのマスターは伏し目がちにふふっと笑うと、見計らっていたかのようにトーヤの分のグラスも前に出した。
「えっと……い、いただきます……」
よく見ると僅かに赤みを帯びたその酒に、トーヤは恐る恐る口を付けた。
「……っ！？」
流し込んだ瞬間、口内に広がった甘さに、トーヤは思わずむせ返った。
クロエはこんな甘い物を平気で飲んでいたのか？思わず神経を疑う。だってこれ――
「チョコレート……ですよね？」
変わらず微笑っているクロエ。餅と言われて渋々引き受けた事、黄泉に「お菓子持ってる？」と聞かれた事……。
「クロエさんって、もしかして……甘味、好きなんですか？」
「ええ。甘味は脳の活性化に良いですから」
本当なのかなと思ったが、声には出さなかった。
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くろーさぎ(プロフ) - ありがとうございます！！これからもよろしくお願い致します♪ (2019年4月26日 19時) (
レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
奈狐(プロフ) - 語彙力が凄く羨ましくです…面白いですね！ (2019年4月26日 19時) (レス) id: 70cd26f670 (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - ありがとうございます！！嬉しいです……！！ (2019年4月22日 16時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんたそ(プロフ) - 私の小説より面白いです。語彙力あってうらやましいＺ！(*≧∇≦)ﾉ (2019年4月21日 18時) (レス) id: 0d77839cd9 (このIDを非表示/違反報告)
ミーシャ - https://uranai.nosv.org/u.php/novel/ilodoli/ (2019年4月13日 14時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
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