歯車《赤》

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涙が出そうになったが、下唇を噛んでこらえた。

でも、下唇を噛むと声が出ないから、すばるくんは「止めろ」と言った。漏れる声。何顔を見られたくないから髪と腕で隠す。


泣いている顔を一瞬見られた気がしたが、すばるくんは何も言わなかった。ただただ、激しく抱かれた。



身体中に付けられた鬱血痕。良くいえばキスマークだが、私の体を見てキスマークなんて言えないだろう。痛々しい痣のようなキスマーク。

こんなにされたことないから戸惑った。されて、1つや2つ。でも数えるのが嫌になるほど。


こんなのいつ消えるのかもわからない。もしかしたら知らないところにも付けられているかもしれない。


誰かが言っていた。たかが彼女じゃない相手のためにキスマークを付けるのは面倒だと。そりゃあそうだ。それに私から「付けないで」と言ったことがある。忘れたの？それともむしゃくしゃしてたの？


それに噛み跡まで。なんだよ。1年ぐらい一緒にいてこんなすばるくん知らない。今まで激しくだかれることはあってもこんなにめちゃくちゃにされることは無かった。



噛み跡がジリジリと痛む。




すばるくんは欲を吐き出すと乱れた髪を撫でて顔を見てこようとした。



私は腕でそれを阻止する。なのに、すばるくんは腕を掴んだ。





すばるくんの指が私の頬を伝う涙を拭った。



私を見る目は優しくて、意味がわからなかった。





めちゃくちゃに抱いておきながら、なんでそんな目をするの？さっさと帰ってくれれば私はあなたに勘違いな思いを抱くことも、あなたに今まで閉ざしていた感情も開くことは無かったのに。







なのに、貴方は酷い人だ。

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