歯車《赤》

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すばるくんに出会っていろんなものを見せてもらった。



きっと本人は普段そんなことをしないんだろうど、私があまりにも渋谷すばるという存在に興味がないからだと思う。



初めて一緒に迎えた朝は私が驚きもしなかったから面白がっていた気がする。

それで「また会おう」言われて、機嫌が悪かった私は「は？」って言ってしまって興味を示さないから剥きになっていろいろ私の興味を引こうと知らない世界を見せてくれた。



確かそんな感じ。



確かに知らない世界は面白かった。




初めてのお酒の飲み方。

普段はいかないようなお店。

普段は会わないような人。

そんな人から聞ける知らない世界。



何もかもが新鮮だった。



新しい知らない世界は嫌いじゃない。

むしろ好きで学生時代は自分からよく飛び込んでいった。



だが、だからと言って今すばるくんと一緒にいるわけではない。



結局は人柄で、話しているうちに２人のサバサバとした性格があってしまったのだ。



そして出会って一か月後にはすばるくんが暇なときに呼ばれて、飲んで食べて一緒にいて楽な関係を過ごしている。お互い気づいてしまった、特定な人物を作るより楽だと。




「A、今度コンサートするけど来る？」

「行かない」

「そ」



私が媚びないからアイドルの話なんてこれで以上。

もう前のように必死で興味を持たせようとはしないようになった。




本音を言えば興味がないといえば嘘になる。


あの有名なジャニーズ事務所のアイドルのコンサートなら見てみたいけど、急にアイドルなすばるくんを見てしまったらTVと茶の間以上の距離感を感じてこの楽な関係を壊してしまうのではないかと思っているからだ。




「なあー」

「なにー？」



ソファーの上に座ってギターの手入れをするすばるくんと、ソファーにもたれるように床に座って携帯をいじる私。

私は携帯から顔を上げるとそのまま上を見上げすばるくんを見た。



「谷間ええな」

「殴られたいの？」

「ええやん」

「変態親父め」

「Aの強気なところもええと思うで？」




そういって前かがみになり唇を合わせに来る。




カランと床に携帯が落ちる音がした。

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