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にこやかな笑みを携えてこっちへ歩いてくる彼は、上からじゃよくわからなかった スラッとしたモデル体型にいつもと同じ一眼レフ。
「俺、中島裕翔って言います!」
『ぇと、、伊野尾、慧…です…』
「伊野尾慧……そっか、よろしくね!伊野尾ちゃん!」
『ぃ、伊野尾ちゃん?』
「うん!なんかいのちゃん可愛いし!ダメ、かな…?」
きゅるん、とした目で見上げられて胸が苦しくなる。
病気のときとはまた違う苦しさ。
『そんなこと、!その、あだ名みたいのとか初めてだから嬉しいよ…』
「よかった!また、来てもいいかな?」
『も!そりゃ!そりゃ、もちろん!』
「よかった」
あぁまただ、苦しい。
そうやって優しく微笑まれると胸がきゅっとなって苦しくて、なんだかとても幸せな痛み。
これでまた、1日の楽しみが増える。
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それからゆーとは毎日のようにここへ来てくれるようになって、色んなことを話した。
好きな食べもの、カメラのこと、弟がいること、
それから親友のことも
「俺の大切な親友、3人いてね?中学の頃からずっと一緒なんだ。
ちっちゃくて、可愛らしいのがちぃ、
ちっちゃくて、すんごいイケメンがやま、
で、その2人よりもおっきくて優しそうな顔してるのが圭人
みんなすっごいいい奴らだよ!」
『そうなんだ、会ってみたいなぁ…』
「今度連れてくるね!」
『うん、ありがとう』
親友のことを話す裕翔はイキイキしてて、嬉しそうで、こんな風に想われてる3人が羨ましかった。
俺も、ゆーとにそんな風に紹介して貰えるんだろうかって。
「それで、さ…?いのちゃんは、男同士の恋愛、とか…どう思う…?」
嫌な予感はしたんだ。
でも一瞬、思ってしまった。俺だったらって。
『…別に、いいと思うよ…?』
「よかったぁ〜!いのちゃんそういうのダメな人だったらどうしようかと思って、
…実はね、その圭人って俺の恋人なんだ」
『え…』
「高校卒業してから、ずっと好きだったって告白されて、最初はびっくりして断っちゃったんだけど、圭人のいい所も可愛い所もいっぱい知ってるし、今はもうすっごい大好きで、大切な人なんだ…。」
『そ、なんだ…』
うまく笑えた自信はない。
俺の片想いは簡単に終わってしまった。
失恋なんて初めてじゃないのに、圭人のことを話すときのゆーとの目は愛しさに満ちていて、こんなに胸が痛いのは初めてだった。
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作者名:ぺす。 | 作成日時:2017年8月3日 21時