検索窓
今日:4 hit、昨日:10 hit、合計:79,532 hit

意味 ページ2




「お前は両親も兄弟も護っちゃいねェよ」

 俺はそう、冷たく言い放った。

「……は?」

 勿論、もう一人の彼女は激怒した様子で俺を睨んだ。

「今、何て言った?わた、しが…護ってない…?何…言って、んの?意味分かんない、意味…分かんない…ッッ!!」

 本格的に取り乱して、ずっと同じ言葉を続ける。だが俺は自分でも分かるくらい冷静で、冷たかった。

「お前は、人質にならなかったAだろ」
「…は、」
「なってねェんだよ、お前は。家族を護る為に"人質"となったA。お前は…家族を護ると思いながらも、行かなかったんだよ、あの屋敷に」
「…な、にを」
「頭では護れてると思ってるけど、それはお前じゃない。お前がやったと思っている事は、やってない。全てやったのは…向こうにいる彼女だ」
「…るさい、だま、れ」
「結局、逃げたのはお前だ。お前は人質になってねェ。お前は…元々、存在してねェよ」

 そう言った瞬間、俺の周りに咲いていた薊の花弁が一気に崩れ去る様に落ちた。そして、目の前に棒立ちしている彼女から煙がたった。シュウウ、と煙を放ち、彼女は自身の自身の手を見つめていた。

「…消えるの?」
「あァ、多分な」
「ふーん、そっか」

 悲しそうに、笑ってた。多分、彼女自身気付いていたんだと思う。何も付いていない首と、女が着そうな、白いワンピース。彼女と正反対の、彼女。

「実弥さん」
「…なんだァ」
「私、実弥さんの事大っ嫌いだわ」
「安心したぜ、俺もだァ」

 ハッと俺は笑い、彼女を睨んだ。するとその顔を見た彼女はニヤッと笑って「だからあの子を大事にしてね」と、煙を放ちながら下半身が消えている彼女はそう言った。

「……」

 大事に、してるさ。でも、自信がないんだよ。

「でも、あの子は護られる程弱くない。あの子が一番恨んで憎んでいるのは、紛れもない"自分自身"よ」
「…ッ、なん、で」
「言ったでしょう?赤い薊の花言葉を。"復讐"。そう、あの子が復讐したいのは…自分を手離した両親でも、自分に首輪を付けたあのクソ野郎でもない。

 ────何も護れなかった自分なのよ」

 下半身が消え去り、いつの間にか両腕も消えていた彼女は消え入りそうな声でそう言った。

「…アイツが、何でそんな…責任を負うんだよ。護ったじゃねェか、自分自身を犠牲にして…ッ」

 震える声で俺がそう言う。彼女は目を逸らして「そんなの…死んだら意味無いのよ」と言った。


 そう、死んだら、意味無い。


友達→←普通



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (147 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
195人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

うぇすとり?ぁー(プロフ) - 大ファンです!完結おめでとうございます!伏線回収も回想シーンも最高でした!自分はアザミちゃんが好きです。 (2021年10月3日 23時) (レス) @page48 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
ライアミ - めっちゃ泣けたヨ!布団がめちゃくちゃ濡れてんだけど……………ヤバいネ。感動をありがとアル!泣くことや笑うことはストレス発散になるからネ!終わりヨ! (2021年3月28日 1時) (レス) id: 2c479952a6 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。光華さん、いつも自分の作品にコメントしてくださって、本当にありがとうございます!鬼滅作品を思う存分書いた後、すぐに銀魂復帰しますので、約束です! (2021年1月25日 0時) (レス) id: 611a77bbbd (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 完結おめでとうございます!次も鬼滅ですか!銀魂も鬼滅も好きなので!! 銀魂作品更新応援してます!何時までも待ってますんで、虚無感ゆっくり消化してください (2021年1月24日 18時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:いくま | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年1月18日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。