馬鹿 ページ21
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羅刹は彼女の首輪を掴んだ。その瞬間、彼女は苦しくなったようで「…ッ!」と唸っていた。
「首をひと突き、で良いか?」
羅刹は気味が悪い程冷静だった。何処を殺そうか考える暇があったのだ。頭、脳天、心臓、腹、首。何処を機能停止にしてやれば即死になるのだろう。出来るだけすぐに逝ける様に殺そう。俺は優しいから。だから首にした。約束をしていたから。彼女の首輪を外すって。だから首にした。外すと同時に殺そうって。
「…ぁ、」
彼女の瞳には大粒の涙がこぼれ落ち、一種の混乱状態に陥った。
殺される
何故?
自分が死を求めたから
何故?
生命を懸けて護りたかった人を護れなかったから
何故?
私が殺したから
何故?
助けたつもりだったから
何故?
血を飲ませたから
何故?
鬼に…
「鬼に…なっているなんて、…思わなかったから…ッ!」
「何故?」
「…え、」
「何故鬼になったのかって聞いてんだよ」
首輪を握り締めて羅刹はそう彼女に問いかけた。何故って。
「そんなの…知らない。こっちが、…聞きたいッ」
小さな叫びだった。小さな訴えだった。何故母親が鬼になったのか?知るか。そんなの私が聞きたいくらいだ。
「じゃあお前が死ぬのと
「…」
羅刹は握り締めていた彼女の首輪を離した。不足していた酸素が一気に体内へ入り込み、思わず咳込んでしまう。
「…ハァ、ハァ、」
死ぬかと思った。いや、死ぬはずだった。死ななければいけなかった。それ相応の理由があったからだ。
「そんなの理由じゃねぇ。ただの当てつけ、
────────
「そ…んな、つもり…じゃ」
「そんなつもりじゃない?じゃあ何でお前はその小刀で腕を刺した"だけ"なんだ?その行為が罪滅ぼしにでもなると思ったのか?何で自分の心臓を刺さなかったんだ?そしたら泣き喚く事無く楽に死ねたんだぞ。お前、生命を馬鹿にしてんのか?」
「…ぁ、…あぁ…」
そうだ。彼の言う通りだ。言い返す言葉がない。
「結局お前は死ぬのが怖いんだ。いや、死にたくないんだ。どうにかして生に縋り付きたいんだ。当然だ、何故ならお前は生きているから」
ビシッと指を差されて彼女は黙ってその指先を見つめた。
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うぇすとり?ぁー(プロフ) - 大ファンです!完結おめでとうございます!伏線回収も回想シーンも最高でした!自分はアザミちゃんが好きです。 (2021年10月3日 23時) (レス) @page48 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
ライアミ - めっちゃ泣けたヨ!布団がめちゃくちゃ濡れてんだけど……………ヤバいネ。感動をありがとアル!泣くことや笑うことはストレス発散になるからネ!終わりヨ! (2021年3月28日 1時) (レス) id: 2c479952a6 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。光華さん、いつも自分の作品にコメントしてくださって、本当にありがとうございます!鬼滅作品を思う存分書いた後、すぐに銀魂復帰しますので、約束です! (2021年1月25日 0時) (レス) id: 611a77bbbd (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 完結おめでとうございます!次も鬼滅ですか!銀魂も鬼滅も好きなので!! 銀魂作品更新応援してます!何時までも待ってますんで、虚無感ゆっくり消化してください (2021年1月24日 18時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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