普通 ページ1
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護りたかった。ただ、笑顔になって欲しかった。俺と同じやり方で、自分を傷つけて欲しくなかった。俺がそんな事言える身分じゃないけど。どうにかして普通に戻してやりたかった。
あァ、彼女と違うと思ったら首輪が付いてなかったのか。そうだ、納得した。
愛されて、褒められて、必要とされて。俺はちゃんと出来たのか。彼女にそれをしてやれていたのだろうか。
俺は彼女を哀れに思っていたのか、可哀想だと思っていたのか、同情していたのか。そんなつもりは。
────本当に、"ない"と言えるだろうか?
俺は良い人になりたくて彼女を護ろうとしたのだろうか。
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彼女の家族は鬼になった。そして、彼女が殺した。何処までも俺と似ている境遇であった。分からない。もう、何もかもが分からなくなったのだ。逃げたい、消えたい、死にたい。そんな事、分からない。そんな区と言わないでほしい。頼むから、生きたいって言ってくれよ。
バッ!!っと、薊の花の花弁を投げられる。彼女は、もう一人の彼女は酷く取り乱していて。声を荒らげて、目も見開いて、呼吸困難の様な焦った様子で。
「……あっち、見て」
向こうの方へ指をさして、そう冷たく俺に言い放つ。俺は指をさした方向へ顔を向けて目を凝らす。
───────彼女、だった。
目の前にいるもう一人の彼女と同じくらいの歳の、無表情で花畑の中座り込んでいる、彼女がいた。俺の知ってる、彼女だ。本物の薊美Aだった。
「…A」
「何?あァ…私じゃなくて、あっち、ね」
鼻で嘲笑う様にもう一人の彼女は呟いた。俺はその姿を黙って見つめた。
「行きなよ」
「…」
「護りたいんでしょ?行ってくれば?可哀想なワタシを助けてあげてよ、ねぇ」
「……」
「もう私怒ってないから、別に貴方に言ったところで何も変わらないし疲れるしもうやめたわ」
シラケたような表情で、全てを諦めたように言い放った。冷たかった。
「…なァ」
「、何?」
「お前は何者だ」
「…は?さっきから言ってるじゃない。薊美Aだって」
「違ェよ」
「…え、」
「お前は、Aじゃねェよ。…というか、さっきからお前が言ってる事全部、お前のセリフじゃねェよ」
俺がそう言うと、無風だった風が一気に下から上に吹いた。効果音を付けるとしたら、ブワァァア!って。困惑したもう一人の彼女は、呆然としていた。
「…な、に…言って、…」
「お前は何も、護っちゃいねェよ」
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うぇすとり?ぁー(プロフ) - 大ファンです!完結おめでとうございます!伏線回収も回想シーンも最高でした!自分はアザミちゃんが好きです。 (2021年10月3日 23時) (レス) @page48 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
ライアミ - めっちゃ泣けたヨ!布団がめちゃくちゃ濡れてんだけど……………ヤバいネ。感動をありがとアル!泣くことや笑うことはストレス発散になるからネ!終わりヨ! (2021年3月28日 1時) (レス) id: 2c479952a6 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。光華さん、いつも自分の作品にコメントしてくださって、本当にありがとうございます!鬼滅作品を思う存分書いた後、すぐに銀魂復帰しますので、約束です! (2021年1月25日 0時) (レス) id: 611a77bbbd (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 完結おめでとうございます!次も鬼滅ですか!銀魂も鬼滅も好きなので!! 銀魂作品更新応援してます!何時までも待ってますんで、虚無感ゆっくり消化してください (2021年1月24日 18時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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