現実 ページ5
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「あとは…彼女の首にひとつ気になる物が付いていた、くらいですね」
そう胡蝶が言うと俺の足取りは一気に重くなり、次第には止まった。
「不死川さん?」
「…アレは、取れねェのか」
あえてその"名前"は出さず胡蝶に聞いた。胡蝶は気付いていたのかと思わんばかりの目で俺を見ていた。
「詳しく触ることが出来ませんでした。何しろ彼女自身が首輪に触られるのを拒んでいましたので」
ハッキリと”首輪”と言う名前を出しながら胡蝶はいつもの様に笑っていた。そして胡蝶の言葉に俺は大きく引っ掛かっていた。
────彼女自身が、拒んだ?
何故、と考えている内に彼女がいる部屋に着いてしまい胡蝶は扉を開けた。
「どうぞ」
「…」
俺は黙ったまま部屋に入り、部屋の奥のベッドで点滴を大量につけながら目を瞑っている彼女を見つけた。
「…寝不足なのか隈も酷かったです。でもいつになっても眠る様子はなく、眠ってくださいと言っても眠らなかったので睡眠薬を飲んでもらいました。こんなに多くの点滴を使ったのは初めてです。かなりの栄養不足の状態です」
淡々と話す胡蝶を横目に俺はこの異様な姿の彼女を黙って見つめる事しか出来なかった。
「コイツ…喋ったか?」
そう恐る恐る胡蝶に聞くと胡蝶は俯いたまま静かに首を横に振った。俺はまた、黙り込んだ。
「…そうかァ」
俺はその一言だけ言って部屋から出た。胡蝶も俺の背中に続いた。
「お館様に伝えるのですか?」
「…当たり前だ」
「彼女は…これから、」
胡蝶は開いた口を閉じた。彼女はこれからどうするのか、そう言いたかったのだろう。そんなの俺が一番聞きたかった。首輪をつけた二十歳前後の女が何も喋らずただじっと遠くを見つめていたのだ。こんな現実、どう受け止めりゃいい。
普通じゃないのだ、悲しそうな眼も恐怖に包まれた眼もしちゃくれない。本当に彼女は、"無"の状態だった。
「胡蝶」
「はい」
「アイツが眼ェ覚ましたら…俺に伝えてくれ」
「…分かりました」
胡蝶の返事を聞くと同時に俺はお館様のいる屋敷へ足を運んだ。
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「報告が遅れてしまい申し訳ありません」
「構わないよ、あの屋敷で…何かあったんだね」
お館様は全てお見通しであった。俺は地面を見つめながら静かに頷いた。
「…屋敷の者ではない女が一人、鬼を目の前にしても全く動じず静かに座っていました。その首には鉄製の首輪が。かなりの怪我を負っていました」
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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