生死 ページ35
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飽きたら放ったらかしは寂しい
付けた傷より付けられた傷の方が痛い
鎖で繋がなくても逃げやしないのに
こんな私は生きも死にも無し
飽きたら放ったらかしは寂しい
付けた傷より付けられた傷の方が痛い
鎖で繋がなくても逃げやしないのに
こんな私は生きも死にも無し
側転。倒立。逆立ち歩き。バク転。不死川実弥が居なくなった屋敷に一人留守番をしている薊美Aは畳の上でただひたすら身体を動かしていた。
十年間何もしていない訳ではない。監 禁されていた部屋には沢山の書物があったから全て読み込んだし、文字の練習もした。今や臨書が趣味のひとつである。
筋力低下を恐れたから家の者が外出をした時には部屋唯一の窓から抜け出し屋根の上で逆立ちやらバク転をしていた。今考えると元々の身体能力が高かったのかもしれない。
そのおかげか身体が身軽だし、柔軟性もある。天井に少しでも引っ掛けがあるとジャンプして掴んでしまうし、天井に脚をつけてぶら下がる事もした。
「…」
逆立ちをして、片手で体重を支えながら考え事をしていた。考え事というのは勿論、自分を拾ってくれた不死川実弥という人物についてである。
「……」
彼は私の事をどう思っているのか。何も喋らない無表情な女、誰が好んで預かろうと思うのか。ヒョイッと手を床から離しクルッと一回転して縁側に着地する。多分、実弥がこれを見たら危ないと言って怒るだろう。
「…ふっ」
怒っている実弥の姿が想像出来たのか、彼女は小さく笑っていた。ひとつ大きな伸びをすると買ってもらったばかりの緑色の着物の袖が肩の方へずれ落ちた。そこから見える痛々しい切り傷が彼女の視線を奪う。
「……」
ふと視線を落とすと目の前には小さな白猫が一匹、屋敷の中に迷い込んできた。おいで、と言うように彼女は手を出して猫を抱きかかえる。
「…猫に
─────そんな私は、異常な血」
小さな声が猫に聞かせるように歌った。いや、これは歌というべきなのか。彼女の眼はとても悲しそうだった。自分の切り傷をつたうように触れると、膝の上に乗っていた白猫はヒョイと逃げてしまった。
コロン、と縁側に寝っ転がる。今夜も月が綺麗だな、そう思いながら彼女は目を瞑った。
夢を見たくない
眠りにつきたくない
また襲ってくるんだ
逃げたい
消えたい
死にたいんじゃない
ただ、生きるのをやめたい
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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