怪我 ページ4
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「どうしたんですか、こんな真夜中に」
胡蝶しのぶが驚いた様子で俺を見ていた。無理もない、俺は怪我をしても蝶屋敷に出向かないからだ。そんな俺が真夜中に一人の女を背負って屋敷を訪れたのだから、胡蝶が目を見開いたのだろう。
「怪我してるみてェだ」
そう言って俺は背中に乗せていた彼女を静かに下ろし、背中をゆっくりとさすって胡蝶の方へ歩く様にさせた。彼女は胡蝶の目を見るなりすぐに逸らし、下を向いていた。
「痣が酷いですね、それに顔色も悪い」
鬼殺隊ではない彼女にも冷静に彼女の容態を診て判断できるのはやはり胡蝶の凄いところだろう。胡蝶は彼女の手を引き屋敷の中のとある部屋へ入れた。
「不死川さん、ありがとうございます。ここからは私に任せてください」
「…あァ」
そう言って胡蝶は彼女のいる部屋の中に入ろうとした。
「オイ、」
「まだ何か?」
「…いや、何でもねェ」
胡蝶は困惑した様子で俺を見ていたが俺は胡蝶の目を逸らし蝶屋敷を後にした。そして懐にしまっておいた例の"鎖"を出し、それを黙って見つめた。首輪の件、胡蝶に伝えたほうが良かったのか。
俺には正解がわからなかった。多分俺が言わなくても彼女の首を見たら一目瞭然なのだが予め伝えておくのも一つの手段だったはずだ。それなのに俺は胡蝶に言わなかった、いや言えなかった。首輪をした人間なんてそうそう見たことがなかったのだ、しかもこんな時代に。
自分の屋敷に着いた俺は今日の出来事を思い返しながら静かに眠りについたのだった。
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目が覚めたのは眠ってから何時間か経過した朝であった。俺は身支度をすませ屋敷を出てその足は真っ直ぐ蝶屋敷へと向かった。
「おはようございます」
蝶屋敷で働いている女が屋敷の前で掃き掃除をしていた。俺の顔を見るなりギョッとしながらも挨拶をくれた。俺が怖いなら挨拶なんてしなくても良いのになんて考えるがペコっとその女に会釈をして屋敷の中に入っていった。
「随分早いご到着ですね、そんなに彼女が心配でしたか?」
いつも通りの笑顔で胡蝶は俺に話しかけた。俺は胡蝶を見るなり「彼女は?」と言う視線を送った。胡蝶はそれに気づいたのか「案内しますよ」と言って彼女のいる部屋まで案内してくれた。
「全身の打撲が酷かったのと、栄養失調が目立ちました。あとは左人差し指と小指が折れていました」
胡蝶は部屋まで歩いている時に俺にそう伝えてくれた。打撲、栄養失調、手指の骨折、か。
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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