着物 ページ29
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「お前用の着物、買わねェとなァ」
朝食をもぐもぐと食べながら彼女は首を傾げていた。
そんなに米を口に詰め込むな、行儀悪いだろ。そんな事を考えながら彼女の顔を見つめていた。が、すぐに。
「…」
要らない、とばかりに首を横に振る彼女。
「一着じゃ不便だろ、それにアレ男用じゃねェか。もっと綺麗な花柄とか、蝶柄とか、そういう…なんつーの、女が好きそうな着物買ってやるよ」
「…」
彼女は断固拒否と言わんばかりにフルフルフルフルとずっと首を横に振っている。痛くねェのか、ソレ。
「買いに行くっつってんだろォ」
ビキッと目を見開き俺は彼女を睨んだ。彼女はその俺の表情を見てピタッと横に振っていた首を止め、もぐもぐしていた米を飲み込んだ。するとやっと観念したのか、彼女はコクリと静かに頷いた。よし、やっと折れたか。
「じゃあ早めに屋敷を出るぞォ。俺は今日の夜任務があるからなァ」
「…」
首を縦に振って彼女は残りの味噌汁を口に運んでいた。朝食は残さず綺麗に食べたな、偉い偉い。
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「髪、結ってやろうか」
俺がそう言ったのは、洗面台の鏡の前で必死に櫛を使って自身の黒髪をとかしている彼女を見つけた時だった。
「胡蝶みてェに上手くはねェけど、ひとつに纏めるくらいなら出来るぞォ」
俺は彼女の髪を持ち、「櫛貸せ」と言って彼女の手に持った櫛を貰った。初めて会った時から思っていたが、彼女の髪は艶々としていて綺麗だった。櫛でとかせばストンと下まで落ちるし、サラサラ過ぎて逆に纏めにくい髪質だった。
「…ん、出来た」
髪をひとつに纏め上げ、団子にしてやった。その上に彼女が持っていた青い薊の花の簪をつけた。我ながら上出来だ。
「…」
ありがとうの意味を込めていたのか、彼女は俺の頭をよしよしと撫でた。
「…子供扱いすんなァ」
それは俺にも言えてるのではないか、と自分でも感じたが、まァそれは良しとしよう。
「あ」
髪も結い、服も着替えて準備万端の彼女。俺はその姿を見て、不意に声が漏れた。そう、彼女の首にしっかりとついている"モノ"。見慣れていたから忘れていたが、彼女の首には銀色に輝く首輪に目を向ける。
このまま街へ出たら絶対不審に思われる。絶対変な目で見られる、俺が。
「…確かアレがあったはず」
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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