状況 ページ3
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じゃあ何だって言うんだ。まさかこの家の者ではないと言っていた彼女をこんな姿にしたのは…この周りに転がっている死体達の仕業だって言うのか。俺は静かに周りの死体を見渡す。もう死んでいるコイツらに聞いたところで分かる訳が無い。この状況に居合わせた鬼もたった今俺が始末したところだつまりこの状況、この真実を知っているのは目の前にいる彼女だけであった。
ボーッとした様子でまだ遠くを見つめ、俺に興味も示さない。こんな血だらけの場所で涙一つ零さず何かを言う気配もない。無理矢理立てらせると首輪に繋がれた鎖がつっかえて立つことさえままならない。こんな状況なのに。
「…何でお前は、助けを求めねェんだァ?」
自分でも分かるほど弱々しい声だった。もはや怒りを通り越して辛く見ていられなかった。そんな彼女はやっと俺の目を見た。が、しかし何故俺がこんな表情をしているのか分からない様な様子だった。一言も喋らない。
俺は彼女の頭を撫で、日輪刀を使って後ろに繋がれている鎖を切った。ジャラ、と音を鳴らし床に落ちた鎖を拾い上げ、懐にしまった。そしてもう一度彼女の手を引いて立たせた。黒く長い髪は血で濡れていて、返り血を羽織で拭き取った肌の色は健康とは言えないくらい真っ白だった。薊色に染まった大きな瞳は生きている様には見えず服装も綺麗な女物の着物ではなく真っ黒な男物の袴だった。
しかし、彼女は容姿端麗であった。目は死んでいるものの綺麗な薊色の瞳は俺を魅了するほど透き通っていた。俺は彼女の手を引き屋敷から出た。すれ違いで隠の者が屋敷の中に入っていった。その様子を彼女は見向きもせず黙って俺の手を握っていた。
彼女の家族は何処にいるのだろうか。何故彼女は首輪をしているのだろうか。鬼に喰われる寸前なのに、何故怯えた様子ではないのか。
沢山の疑問が俺を襲ったが何を聞いても口を聞いてくれないだろうと思い俺は黙って蝶屋敷へと向かった。返り血の多さで気が付かなかったが彼女の腕や脚、見てはいないが多分腹の辺りも沢山の青黒い痣があった。鬼の仕業には見えない様な大量の痣。そしてまだ首に巻きついている鉄製の首輪。
大方の予想は出来たが、認めたくなかった。信じたくなかった。
「…脚、痛いかァ?」
手を引いて分かったが彼女の足取りは少しよろめいていた。首を横に振る彼女は"痛くない"と意思表示をしているが痛々しい痣がある脚を見て俺は彼女を背中に乗せたのだった。
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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