人質 ページ15
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お館様が口を開いた。その瞬間一気に周りは静かになる。
「そして彼女一人だけが生き残った。実弥が助けてくれたんだよね、本当にありがとう」
「…いえ、当たり前の事をした迄です」
俺は下を向きながらそう答えた。そう、俺は当たり前の事をした迄だ。隣の宇髄が「お前が助けたのかよ」と呟いていた。俺が睨んでガン飛ばしをしたら黙り込んだ。
「Aは少し人見知りでね、余り皆と会話が出来ないんだ。私もやっと筆談で話せる仲になったよ」
筆談で彼女と対話をしたというお館様の言葉に俺は思わず顔を上げた。彼女はまだ何も喋っていないのか。
「A、例の件を柱の皆に伝えても大丈夫かな」
お館様は襖の向こうにいる彼女へ話しかけた。半開きの襖から彼女が少しだけ顔を出し、コクリと頷いた。
「ありがとうA、もう少しだけで良いから顔を出してくれるかい。首元だけで良いんだ」
"首元"。やはりあの事を言うつもりなのだろう。彼女は俺達から離れてはいるが襖を静かに開いて隠れていた顔を見せた。
他の皆の様子が一気に豹変した。無理もない、俺も初めは動揺した。何なら今もだ。彼女の首には初めて会った時と同じ、鉄製の首輪が巻かれていた。見えないが後ろには俺が無理矢理斬って少々残っている鎖が付いているだろう。
「…ありがとうA、もう大丈夫だよ」
そう言うと彼女はすぐに襖を閉めた。完全に閉めるのはダメらしく、にちか様とひなき様がもう一度半開きにしていた。彼女は背を向けてまた体育座りをしていた。
「あれは…何?」
「首輪の様に見えますね…人、なのに」
甘露寺と時透が口を開いた。俺と胡蝶以外の柱達も口々にあの鉄製のモノの正体を知りたがっていた。
「皆、今のが何か分かったかな」
周りは静かにお館様を見つめていた。
「Aは、どうやら人質だったみたいだ」
「!」
俺と胡蝶も知らない事実が、今お館様の口から出された。人質?どういう事だ。
「Aは十の頃、家族の命令でとある一家の人質となったんだ。人質となって、今年で十年らしい」
十年。歳は今年で二十という事か。大人びた容姿であったが、やはり俺と歳は変わらなかった。
「喋る事は愚か、外出も許されず、ずっとあの屋敷に閉じ込められていたみたいだ。
「…」
彼女に声は聞こえているのだろうか。自分の話をされているのに全く興味を持たない様子に見えた。こちらに見向きもしない。
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ほわ - はじめまして!読むの楽しいです!!もしかしてDECO*27さんの依存香炉の歌詞引用されてますか!?!? (2021年3月12日 10時) (レス) id: 67e3028028 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 芋けんぴさん» コメントありがとうございます。不死川さんのキャラ、書きやすそうで意外と書きにくい、掴みどころや考えてることが分からないような、、、そんな事をいつも考えながら書いてます笑作品を褒めて頂き嬉しい限りです!これからもこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 光華さん» コメントありがとうございます。確かに…共通点多いですよね、、、その姿にいつの間にか惚れてしまったのかもしれません…!もうすぐ続編へと移行しますので次の作品もよろしくお願いいたします! (2021年1月18日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 初コメント失礼します。私も鬼滅だと不死川さん推しです。不死川さんのキャラを殺さず、丁寧に物語を紡いでいるところにとても惹かれました!今から続きを読ませていただきます!! (2021年1月18日 1時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - はわわわ 感激です! 鬼滅だったら不死川さんなのわかります!護る為に大切な人を突き放すところとか何か共通点があって土方さんと似てないけど似てるんですよね。(結局垢名前垢と同じ) 作品更新応援してます! (2021年1月17日 17時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
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