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周りは私の存在なんて見ていなかった。モニターを確認するとそこには一位の轟、二位の爆豪の接戦に皆が釘付けされている。棄権の許可がおりた私は控え室に戻ろうと足を運んでいた。と、その時だ。控え室の扉を開けたら見知った包帯だらけの男の人がまるで私が此処に来るのを知っていたかの様な目でこちらを見ていた。そう、相澤先生が立っていたのだ。
「……どうも」
扉をパタンと閉めた。そして控えめな声で一応挨拶をする。しかし相澤先生からの反応はない。ただ無言で私を見るだけ。多分、いや絶対に怒っているのは見え見えだ。だからこそ敢えて私はとぼけたフリを貫き通した。私の記憶が正しければ先生は先程までプレゼントマイクと共に実況をしていた筈だ。それがどうしたものか、先生は私が棄権すると知った瞬間控え室で待ち伏せをしていたなんて。
控え室にあるモニターの音だけが部屋に虚しく響いていた。プレゼントマイクの声色がだんだんと高くなっていく。きっと盛り上がりに達しているのだろう。一位になるのは轟か爆豪か。もしかしたら他の人か。そろそろ終盤に差し掛かって周りも目が離せない、そんな頃合だ。なのに私は一人控え室で先生と向き合う形で立ち尽くしている。皆が頑張って闘っている中────本当に、私は、一体。
「お前は何がしたいんだ」
私が今一番頭に残っている事をそっくりそのまま先生が告げた。私の脳内を直接覗いているのではないかと疑うくらい一言一句間違えずその通りの台詞だった。私は先生の目を合わせず、顔を俯かせた。分かっている。先生が怒っている理由も、私が駄目な理由も、全て分かっている。
「…私は、私が正しいと思う道に進んでいるだけです」
それだけを告げて私はロッカーの中にある鞄を持った。観客席に移動しようと思ったからである。先生は深い溜息を吐いただけだった。遂に見放されたか、と思ったが先生は私の頭をぐしゃぐしゃと撫で始めた。いきなりの事で驚いた私は思わず頭に乗っていた先生の手を思い切り払い除ける。頭を撫でられる、という行為が初めてだったので狼狽えてしまった。
「…あ、す、すみません」
「志村。お前が言うその『道』とやらは……本当に正しいのか？」
沈黙が続く。思いもよらない言葉に私は鞄を床に落とした。そして今言われた言葉が何回もリピート再生されるように自身の脳内に刻まれる。ちょうどその時、実況の声が耳に届いた。一位の発表である。
一位は、緑谷出久だった。
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麗葉 - とても面白かったです！空白があると読みやすいかなと思います！ (6月19日 14時) (
レス) id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - レオさん» コメントありがとうございます。夢主の過去は後に出てきますので暫くお待ち頂けると幸いです。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - eggちゃんさん» コメントありがとうございます。更新頻度をあげられるよう全力を尽くしますのでこれからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - のむさん» コメントありがとうございます。ファンになって頂けるなんて光栄です。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 猫さん» コメントありがとうございます。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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