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目の前の男に集中していた。他の敵なんざその他に含まれるただのエキストラ同然だ。この男に触れたら最後、崩れて亡くなる。そのことだけを頭に入れてただひたすら周りにある瓦礫を浮かせては死柄木に目掛けて攻撃する。しかしその瓦礫も奴に触れた瞬間粉々に砕け散ってしまう。非常に厄介な個性だった。こう何度も念力を繰り返したところで攻撃はうまく当たらない。ただ私の体力が消耗するだけの無謀な戦い同然だった。するとその時、たった一瞬、そう、一秒もない程の瞬間だったが私に隙が出来てしまった。勿論死柄木はその一瞬の「隙」を見逃す筈がない。しまった、と感じた時にはもう遅かった。
────私は目を見開いた。
確実に殺られると悟った。その覚悟をしていた。しかし私の前に現れたのは死柄木でもなければ他の敵でもない。──相澤先生が私を庇う様に防御体制に徹していたのだ。呆気に取られそうになる。が、そんな暇などない。先生に感謝する時間さえ今は惜しい。私は先生によって与えてくれた十分すぎる時間を使って今までにない程の力を込めて両手を前に向けて思い切り念じた。イレイザーは死柄木に向かって肘を突きつける。確実にイレイザーは無理をしている。髪の毛が下がる瞬間、つまり個性が解かれる瞬間がだんだん短くなってきていたのだ。
またしてもタラリと血液が垂れ流された。今度は両鼻からだった。集中しなければ自分の脳みそも吹っ飛んでしまいそうになる。頭がイカれるのを防ぐ為に舌を噛みちぎった。口の中に何だか分からない嫌な感触が残る。
イレイザーの肘が崩れた。崩壊の個性をモロに食らったからだ。体制を整えないとこのままではイレイザーが死んでしまう。私は口から血の塊を吐き出して今まで念じてきたものを一気に放出した。一瞬にして大規模な地響きが生じる。瓦礫は崩れ出し、地面は裂かれ、死柄木を取り囲む様にして雪崩のように崩壊していった。死柄木はそれに呑み込まれ、敵は全滅した。
─────様に、見えた。
私とイレイザーの元に大きな黒い影が囲う。背筋が凍った。鼻から血がどくどくと流れた。脈拍数が上昇しているのではないかと疑うくらい私の状態はかなり悪化していたのだ。
「対 平和の象徴。改人 『脳無』」
死ぬほど殺したくて憎い男から、絶望の言葉が発せられた瞬間だった。
私は知っている。たとえどんなに素晴らしい個性を授けられたとしても、圧倒的な力の前ではただの「無個性」にすぎない事を。
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麗葉 - とても面白かったです！空白があると読みやすいかなと思います！ (6月19日 14時) (
レス) id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - レオさん» コメントありがとうございます。夢主の過去は後に出てきますので暫くお待ち頂けると幸いです。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - eggちゃんさん» コメントありがとうございます。更新頻度をあげられるよう全力を尽くしますのでこれからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - のむさん» コメントありがとうございます。ファンになって頂けるなんて光栄です。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 猫さん» コメントありがとうございます。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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