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案外すんなりと鞄を渡してくれた。本当にただ拾って持ち主である私を待っていたようだ。彼の意外な一面に舌を巻いたがそれも束の間。小中同じな私達は家も近所な為このまま共に下校する流れとなってしまった。今になってかなり後悔している。
初めはお互い無言だった。私から話しかける事なんて滅多にないのでそれはいつも通りなのだが、爆豪もあんな事があったからか静かだった。しかし駅に到着する頃に、重苦しい空気を払い除けるように爆豪がポツリポツリと話し始めたのだ。不本意ながらも私はそれを黙って聞く事にした。
「テメェの個性…あんなに強かったんだな」
動いていた足が、止まった。勿論それは私の。タイミングが良いのか悪いのか、生暖かい風が吹いた。私の短く切り揃えた髪の毛が鬱陶しく靡いた。視線を爆豪に合わせる。爆豪の目はいつもと違っていた。馬鹿にする様な目でも、苛立ちを抑えている目でもない。何を考えているのか分からない、目。
「強くないよ」
即答した。本心だ。心からの言葉だった。爆豪は少しだけ目を見開いていたが、またいつもの表情に戻る。
「…今日、クソデクに負けた。氷の奴の個性を見て、圧倒された。テメェの個性も、あんなにスゲェなんて知らなかった。ポニーテールの意見にも…納得した」
心臓の音が煩く鳴り響く。このまま爆発しそうな感覚だった。何故私はこんなにも動揺しているのだろう。何故、私は素直にありがとうと言えないのだろう。呼吸が浅くなった。必死に私は息を飲み込んだ。何度も何度も息を食べ続けた。
「俺はテメェも他の奴らも…デクも超えてナンバーワンになってやる…ッ！しかとその目に焼き付けとけや！クソ女ッ！」
爆豪の目は赤く腫れていた。きっと緑谷と話していた時に泣いたのだろう。爆豪勝己という男は自尊心の塊だ。何度も言うが、その積み上げてきたプライドが壊れてしまえば彼は彼でなくなる。そう思っていた。ずっと、それが壊れない限り爆豪は爆豪だと思ってきた。
───どうやら、私は爆豪を甘く見てきたらしい。
彼は強かった。どこまでもその「夢」は、「目標」は、「勝利」は曲げない。そんな彼に嫉妬している自分が居て虚しくなった。惨めな気分になったのも久しぶりだ。
「ここに雑草がある。何処にでもあるただの雑草だ」
地面を見つめていた私が口を開いた。道端に生えている雑草に視線を移してそんな事を呟いてみる。爆豪も私の言葉を静かに聞きながら視線を下ろした。
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麗葉 - とても面白かったです！空白があると読みやすいかなと思います！ (6月19日 14時) (
レス) id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - レオさん» コメントありがとうございます。夢主の過去は後に出てきますので暫くお待ち頂けると幸いです。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - eggちゃんさん» コメントありがとうございます。更新頻度をあげられるよう全力を尽くしますのでこれからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - のむさん» コメントありがとうございます。ファンになって頂けるなんて光栄です。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 猫さん» コメントありがとうございます。これからもこの作品をよろしくお願いいたします。 (2021年12月14日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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