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年季の入った木造の建物が建ち並ぶこの風景は、古き良き江戸の街並みを思わせる。
風雅な香りに包まれる石畳みを、風が優しく吹き抜けて行く。
竹の串に刺さる炙られた団子や、名産品の薩摩芋を使った甘味、白くてもちもちな饅頭など、一歩足を進める度に甘い誘惑に包まれる。
Aは、そんな誘惑の中、実弥を今か今かと待っていた。
黄、橙、蒼、紅の菊の花が散りばめられ、そこに可憐に飛び交う純白の蝶が描かれている紫の生地で縫われた着物姿のA。
帯は、蝶の純白のような鮮やかさも持ちつつ、淡く朧げな色味の白妙だった。
薄い桃色の大きな花と、その周囲を彩る紫のちりめん玉飾りを、低い位置に一つに纏められた髪に添えている。
今日は二人が付き合って二年となる、記念すべき日だった。人気の観光スポットである風情漂う街に、二人の姿があった。
二人は着物を着て街を探索することになっているのだが、実弥はまだ店から出て来ない。
まあ店内は、Aと実弥のような恋人達や若い女性たちで溢れかえっていたから、時間がかかってしまうのは致し方ない。
「お姉さん。一人？」
「あ、いえ」
「お着物素敵ですね。遊び行こうよ。ぱあっと」
「─────さーせん。その子、俺の彼女なんでェ」
二人組の男性とAの間に割って入ったのは実弥だった。
濃縮され深みを増した緑の着物を着て、前髪を掻き上げたセットの彼は、Aを自身の背中に隠した。
実弥から香るシトラスの爽快さに、Aは包まれ安心感に浸る。逞しく大きな背中、その背中に回された実弥の手を握れば、力強く握り返してくれる。
しどろもどろで言い訳を述べながら、立ち去る二人組を横目に、実弥は態とらしく溜め息をついた。
「なにやってんだよォ、たく」
「……かっこいい」
「はァ……、行くぞォ」
「ねえ！言う事ないの！？」
「あァっ！もう！…、可愛い……似合ってらァ」
耳まで茹で蛸のように赤い実弥は、Aの顎をするりと撫でながら微笑んだ。
もう一回、と強請るAに馬鹿がァ、と実弥はAの手を引いた。
コツコツと下駄が石畳みを叩く音が二人を包む。慣れない下駄も、今の二人なら何の問題もない。何があっても、二人は手を取り合う、前に進む。
─────ただ、それだけなのだ。
二年半記念日はちょっとしたいざこざ。→←二年記念日は風情漂う街並み。
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km10230803(プロフ) - 初めまして！一気読みさせて頂きました！答えが分からなくて...よろしければ空いている時間などに答えを教えていただきたいです！とっても素敵なお話でした！ (6月29日 22時) (
レス) id: d1c3fcb5a1 (このIDを非表示/違反報告)
うぇすとり?ぁー(プロフ) - 辛くて切ない作品でしたがとても素敵な小説でした😭 (2021年9月30日 22時) (レス) @page1 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
すみっことかげ(プロフ) - 一気読みさせていただきましたが、鳥肌がぁぁアァア・・・・・。辛くて心臓痛いです(;_;)でも素敵なお話でした。ありがとうございます。 (2021年7月4日 23時) (レス) id: 8ba328b5fb (このIDを非表示/違反報告)
そういんく(プロフ) - 答え…全く分かりません！メッセで送ってくださると嬉しいです！お願いします！この話、最後は少し悲しいですけど、とても感動しました！ (2021年6月21日 22時) (レス) id: 26dc2f827c (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - 答え…なんだろう…？？メッセで教えてくださいっ！！とってもきれいなお話でした！ (2021年6月20日 14時) (レス) id: 94e3b43bb4 (このIDを非表示/違反報告)
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