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 季節はもう蝉が煩く鳴り響く頃合いになっていた。海風が音を立てながら吹き、彼女のストレートヘアがサラリと靡いた。彼はそんな彼女の姿に目を奪われながらも「ほら」と言って水族館の入場チケットを渡す。そう、今日は付き合って一年半の記念日だ。
 お気に入りのヒールで入場ゲートを(くぐ)り抜けるAは、少し後ろを歩く実弥の方に向かって早く早くと急かす様に手招きしていた。

「走ったところで魚は逃げねェよ」
「それでも早く行きたいの!」

 水族館という場所に適している夏らしい水色と白色のストライプ柄ワンピースの裾がひらひらと舞うほど彼女は浮かれていたのだ。いつまで経ってもノロノロと歩く実弥に痺れを切らしたAは実弥の左手を引っ張る様に繋ぎ止め、水の世界へと入った。

「やばいよ実弥、魚しか居ない!」
「水族館だからなァ」
「あ、蟹が居る!めっちゃ高級じゃん!」
「すぐそういう話に持っていくなァ」

 そんな他愛ないやり取りが続き、ふと実弥が腕時計を確認するとあと十分ほどでイルカショー開始時刻となっている事に気がついた。

「A、イルカショーあるぞォ」
「勿論行くに決まってる!」

 実弥の言葉を遮る様にAは勢いよく返事をする。そして握られた手を少しだけ強めてイルカショーが開催される場所へ移動したのだった。

「え、実弥。これは一番前に行くっきゃないよね?」
「お前なァ…」

 一番前など小さい子供達しか居ないのは重々承知であったが余りにも楽しそうにイルカを眺めるAの姿に心折れた実弥は彼女の我儘を聞くべく一番前に腰を下ろした。


 ────結果は、案の定というやつだ。

「盛大に濡れたな、Aだけ」
「え、何で私だけ全身浴びてるの?狙われてる?」

 水族館のスタッフの人に名指しされるほどイルカに好かれてしまったAは勢いづいたイルカの大ジャンプの水しぶきをピンポイントで当たってしまったのだった。流石の実弥も思わず吹き出してしまうくらいに。

「…いや、才能だよ、マジで」

 笑いを必死に堪えながらタオル生地のハンカチでAの服を拭いていた。当の本人である彼女は顔を赤くしながら怒っている。そんな姿さえも実弥にとっては愛おしかった。

「もうイルカに好かれるのは懲り懲りです」
「そうだなァ。好かれるのは俺だけにしてくれェ」

 そんな事をサラッと言ってしまう彼。またしてもAは顔を赤く染め上げ握り締めていた手の力を強めたのだった。

二年記念日は風情漂う街並み。→←一年半記念日は水の世界。



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km10230803(プロフ) - 初めまして!一気読みさせて頂きました!答えが分からなくて...よろしければ空いている時間などに答えを教えていただきたいです!とっても素敵なお話でした! (6月29日 22時) (レス) id: d1c3fcb5a1 (このIDを非表示/違反報告)
うぇすとり?ぁー(プロフ) - 辛くて切ない作品でしたがとても素敵な小説でした😭 (2021年9月30日 22時) (レス) @page1 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
すみっことかげ(プロフ) - 一気読みさせていただきましたが、鳥肌がぁぁアァア・・・・・。辛くて心臓痛いです(;_;)でも素敵なお話でした。ありがとうございます。 (2021年7月4日 23時) (レス) id: 8ba328b5fb (このIDを非表示/違反報告)
そういんく(プロフ) - 答え…全く分かりません!メッセで送ってくださると嬉しいです!お願いします!この話、最後は少し悲しいですけど、とても感動しました! (2021年6月21日 22時) (レス) id: 26dc2f827c (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - 答え…なんだろう…??メッセで教えてくださいっ!!とってもきれいなお話でした! (2021年6月20日 14時) (レス) id: 94e3b43bb4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いくま x他1人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年6月14日 10時

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