こ た え あ わ せ。【不死川実弥】

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 「誰かをお待ちですか？」
「あ〜…、実は今日で彼女と付き合って四年になるんです」
「それは、おめでとうございます、もしかして、その…プロポーズなんて？」
「恥ずかしいですけど、まあ、そのつもりで」


  都心の中心部に建つホテル内のレストランに実弥の姿があった。普段、数学教師として教壇に立つ彼は、惜しげもなくブラウスを肌けさせて胸筋を晒している。しかし今日は、きっちりとボタンを締めそしてネクタイも。
　そわそわとどこか落ち着きのない実弥は、左の手首に巻かれる以前の誕生日にAから贈られた時計を何度も見る。
　一面、ガラス張りとなっているレストランには、ウェイターが影を薄めつつ見守っている。そんなウェイターが、気を利かせてか緊張した実弥に声をかけた。
　すると実弥は、目を逸らしながら笑みを浮かべた。仄かに頬が染まる実弥を見て、ウェイターは愛が形となり未来へ進むその瞬間に立ち会えると思うと、胸が熱くなり精神誠意、おもてなしをと背筋を伸ばす。
　窓から映える外の世界に鎮座する漆黒と満月がずうずうしいぐらい主張してくるが、実弥はそれどころではない。
　
  ────心臓が早鐘を打つ中で、実弥はずっとAに想いを馳せていた。
 
この四年間、様々なことがあったが、思い出されるのは全て、Aの屈託のない笑顔だった。
　ころころと変わる表情は、実弥の何度も疲弊しきった心や身体を癒した。そしてその笑顔のため、彼は社会の荒波にも果敢に挑んだ。彼女さえいれば自分はどんなことだって出来ると確信していた。
　自分のこの先続く何十年という人生に、Aがいなければ自分はどうなってしまうのか想像出来ない。それぐらい、実弥にとってAという存在は魅力的でなくてはならない存在なのだ。
　実弥は、準備した指輪を取り出した。控えめなシルバーのリングの内側には、柄にもなく実弥のものにはA、Aものには実弥とローマ字で彫られていた。 

 「素敵な指輪ですね」
「…こんなに緊張するんスね」
「きっと上手くいきますよ」
  
　柔らかい笑みを浮かべるウェイターを横目に、実弥は突然震えたスマホを手にとった。液晶画面には表示されたのはAの母の名前だった。一つ会釈をして立ち上がった実弥はスマホを耳元に当てた。
　愛し方さえ何もわからなかった二人が、傷つき、もがきながら進んだ道に間違いはなかった。指輪のように光り輝く道を二人はこの先も歩み続けるのだ。ずっと、ずっと。

答え合わせを、しよう。→←四年記念日は、＿＿＿＿＿。

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