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───────未来の話を、しようか。
ふと、思い出したかの様な口調で。Aが聞こえるか聞こえないかくらいのボリュームで。手を繋いだまま実弥は、そんな事を呟いた。
「…未来?」
新作の抹茶フラペチーノを飲みながらAは首を傾げる。そんな姿を見ながら実弥は優しい笑顔で指を差す。指した先にあるのは、不動産屋の物件広告。
手に持っていた抹茶フラペチーノが思わず落としそうになるくらい、Aは目を見開いた。そしてバッと隣に居る実弥の方へ振り向き、「しよう!!」と街中という事を忘れて大きな声で叫んだのだった。
「やっぱり駅から近い方がいいよね」
「そんで南向き」
「コンビニも近い方が良い!」
「築五年以内でって……本当にあんのかァ?」
先程抹茶フラペチーノを飲み干したにも関わらず近くのカフェでガムシロップたっぷりのミルクティーを飲むAと、同じくミルクたっぷりのカフェオレを飲む実弥。そんな二人の間に置かれたのは実弥のスマホ、その中のメモ帳に書かれているのはアパートの物件条件たち。
「ふふ、ねえ実弥」
「何だァ?」
「実弥は子供、何人欲しい?」
両手で頬杖ををつきながらにやにやと笑うA。思わず飲んでいたカフェオレを吹き出しそうになるも、慌てて咳き込み「…お前なァ」とだけ伝えた。
「私は二人がいいな」
「…そうかィ」
「あ、照れてる?」
「うるせェ」
図星の様子を見せながら実弥はAの額をデコピンする。勿論、言わずもがなその手付きは優しかった。
「実弥」
「何だァ」
「ずっと一緒に居ようね」
「そんなの、言われなくても離さねェよ」
「……もう、大好き」
ブラウンのドットスカートがひらひらと揺れながら、Aは白い歯を見せながら笑う。心から楽しそうに、彼女はいつも実弥に笑顔を魅せる。Aの笑った顔が、楽しそうな表情が、実弥にとって生きがいであった。Aの笑顔をこの先もずっと見ていきたい、ずっと隣に。
三年半の記念日デートは甘い飲み物と共に未来の話をする、ただそれだけなのに今までのデートとはひと味違う、特別な一日となったのだった。
──────答え合わせまで、あと半年。
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km10230803(プロフ) - 初めまして!一気読みさせて頂きました!答えが分からなくて...よろしければ空いている時間などに答えを教えていただきたいです!とっても素敵なお話でした! (6月29日 22時) (レス) id: d1c3fcb5a1 (このIDを非表示/違反報告)
うぇすとり?ぁー(プロフ) - 辛くて切ない作品でしたがとても素敵な小説でした😭 (2021年9月30日 22時) (レス) @page1 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
すみっことかげ(プロフ) - 一気読みさせていただきましたが、鳥肌がぁぁアァア・・・・・。辛くて心臓痛いです(;_;)でも素敵なお話でした。ありがとうございます。 (2021年7月4日 23時) (レス) id: 8ba328b5fb (このIDを非表示/違反報告)
そういんく(プロフ) - 答え…全く分かりません!メッセで送ってくださると嬉しいです!お願いします!この話、最後は少し悲しいですけど、とても感動しました! (2021年6月21日 22時) (レス) id: 26dc2f827c (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - 答え…なんだろう…??メッセで教えてくださいっ!!とってもきれいなお話でした! (2021年6月20日 14時) (レス) id: 94e3b43bb4 (このIDを非表示/違反報告)
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