ページ ページ11
.
今日の実弥はどこか機嫌が良かった。先日二年半記念日のお祝いとして、ちょっと良さげなディナーに行って、ケーキまで食べて、お揃いのネックレスまで貰って。一日で沢山の贅沢をした二人は、暫くは互いの家で会おうと約束していたのだ。
そして、今日はあの日以来のお家デートとなっていた。しかも泊まりで。実弥の家にはAのお泊まりグッズは全て揃っており、パジャマ等の部屋着は実弥に借りていた。今日も夕方になると一瞬にスーパーで買い出しに行き、ハンバーグを作り、仲良く食べた。
卒論を進めたい、と言う実弥の意見を聞き入れて先にAは風呂に入った。風呂から上がり、実弥愛用の白Tシャツと短パン、と言うラフな格好で部屋に戻る。
すると目の前には黒Tシャツ、黒スキニーと、全身黒ずくめの実弥が黒縁眼鏡を掛けて、いつになく真剣な表情で一人パソコンと向き合っていたのだった。
そんな姿に見惚れながらも、Aは冷蔵庫から水を取り出し喉を潤わせた。やはり冒頭で述べた様に、今日の実弥は少し浮かれている。面倒な卒論を相手にしていてもその様子が伺えるくらいだ。余程良い事があったのだろう。
まさか、私と会えたから?なんて、都合の良い考えをしてしまうA。だが別に実弥と会う事は久しぶりの出来事ではない。では、何が理由なのか。
「俺も風呂入ってくるわァ」
「ん、いってらー」
ただの言葉でさえも少し声色が高い。何かあった、確実に。そんな事を考えながらAは持っていた二リットルのペットボトルを冷蔵庫にしまおうとして扉を開けた。
「……あれ?」
冷蔵庫の中には、大きめのお皿の上にラップで包まれたおはぎがひとつ。しかも二個あったようだ。この皿の上にはひとつしかないが、となりに妙に隙間があるしなんなら少し餡子が残っている。実弥がきっと食べたのだろう。
「となると、これは私の分か!」
そう勝手に自己解決して、おはぎをペロリと食した。甘くて美味しいがやはりプリンには負ける、なんて呑気な事を考えていると、実弥が風呂から上がった音が聞こえてくる。
「あちー、って……え、」
「ん?」
タオルで頭をガシガシと拭きながらAを見つめる実弥。その目は段々見開かれる。実弥の手に持っていたタオルがパタリと落ちた。そして、Aは瞬時に悟った。あ、やばい、と。
「……………これ、実弥の?」
「……………あァ」
───────ああ、やっちまったぜ。
60人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
km10230803(プロフ) - 初めまして!一気読みさせて頂きました!答えが分からなくて...よろしければ空いている時間などに答えを教えていただきたいです!とっても素敵なお話でした! (6月29日 22時) (レス) id: d1c3fcb5a1 (このIDを非表示/違反報告)
うぇすとり?ぁー(プロフ) - 辛くて切ない作品でしたがとても素敵な小説でした😭 (2021年9月30日 22時) (レス) @page1 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
すみっことかげ(プロフ) - 一気読みさせていただきましたが、鳥肌がぁぁアァア・・・・・。辛くて心臓痛いです(;_;)でも素敵なお話でした。ありがとうございます。 (2021年7月4日 23時) (レス) id: 8ba328b5fb (このIDを非表示/違反報告)
そういんく(プロフ) - 答え…全く分かりません!メッセで送ってくださると嬉しいです!お願いします!この話、最後は少し悲しいですけど、とても感動しました! (2021年6月21日 22時) (レス) id: 26dc2f827c (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - 答え…なんだろう…??メッセで教えてくださいっ!!とってもきれいなお話でした! (2021年6月20日 14時) (レス) id: 94e3b43bb4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ