絶対に医者にさせたい先生VS絶対に結婚したいヒロインVS何も知らない男

第2章 挨拶 ページ4

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「よ、志崎」
「先生おはようございます、今日も不死川くんがかっこよすぎて毛穴から何か出そうです」
「いちいち表現が気持ち悪ぃんだよ」

　あの交換条件から翌日の出来事である。廊下で見慣れた後ろ姿を発見し、俺は挨拶がてら話しかけた。とりあえず不死川と話をさせなければアイツは医者にならない。つまりコイツにコミュニケーション能力というものを伝授させる必要があるのだ。大丈夫かなこれ。

「よし志崎、不死川におはようって言ってこい」
「逝ってこい？死ねと？」
「よし痛くしねえから叩いていい？」
「ごめんなさい」

　兎にも角にも不死川自身に志崎の存在を覚えてもらわなければいけない。そもそもアイツ、女子と話すようなキャラではない。これは一筋縄ではいかない相手である。困ったな。

「まずは挨拶が全てだ。緊張しなくていい、普通におはようていいんだよ。変に意識し過ぎると逆に好意がバレるぞ」
「好意どころか生存を日々感謝してるレベルなんですけどそれでも大丈夫ですかね？」
「もうなんでもいい」

　彼女の肩を押して不死川の方へ無理やり進ませた。タイミング良く不死川は一人廊下を歩いている。ベストチャンスだ、これを逃す訳にはいかない。

「行け志崎！漢を見せろ！」
「女です逝って来ます！」

　真顔でそう返事しながら早歩きで不死川の方へ近づく志崎A。何だ、意外と度胸あるじゃないか。派手に見直したぜ。…ん？いやちょっと待てアイツの歩き方、手と足同時に同じ方向で出してるぞ派手に緊張してんじゃねえか馬鹿野郎。

「しししな、しなっず、がわぬん」

　がわぬんって何だよどんな言い間違いだよ流石にやばいだろただの不審者じゃねえか。ダメだ、ツッコミどころ満載の彼女を俺は冷や汗をかきながら見守る。学力偏差値は八十超えでも恋愛偏差値三十もないのではないかと疑うレベルのガチガチさであった。なんか色々心配になってきたわ。

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